Gummy Gummy Night Festival

時空を旅する

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「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」 2/11 さいたまスーパーアリーナ ライブレポート

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 思い返すとあれは約9か月前。2017年5月1日、BUMP OF CHICKENツアーPATHFINDERが発表された日だ。あまりの突然すぎる大きな情報に僕は戸惑いと嬉しさを隠せなかった。反射的に感情が昂ぶってしまった。彼らはいつもこうだ。大きくて膨大な情報を一気に発表して、私たちの感情を狂わせてくる。追いつかない情報に必死になって食らいつき、何とかすべての情報を把握したときには、どこからか名前のない涙が、心の底から溢れ出ていた。止まらない胸の鼓動がワクワクやドキドキに変わり、早く9月にならないかなって思いながら、変わらない生活とただひたすら戦っていた。

 

 僕はこれまで、ありがたいことに何度かBUMPのライブに参戦してきたけれど、いつも地元に一番近い場所、名古屋公演にしか応募せず、複数公演参戦している人たちを見ては、いつも後悔していた。だから今回は、出来るだけ頑張ってチケットを手に入れようと、ただ漠然と思いながら、名古屋公演以外にも行ける範囲の場所を絞り、覚束ない手つきを駆使してイープラスで申し込んだ。そして月日が経つと、またBUMPさんは私たちに追い打ちをかけるように情報が解禁されてゆく。そう、追加公演の情報だ。2回に及ぶ追加公演の発表でツアー公演数は初めの発表の公演数の約2倍の31公演となった。ツアーファイナルは2月11日のBUMP OF CHICKEN結成22周年を迎える節目の日となった。公演場所はさいたまスーパーアリーナだ。僕は迷うことなく応募した。なぜならまた同じような後悔を繰り返すと思ったからだ。でも、必ずチケットが手に入るとは限らない。というか、えげつない倍率で、チケットが取れるなんて微量も思っていなかった。こればかりは本当に運だから、チケットが取れなかったら潔く諦めようなんて思ったりもしていた。そして結果発表の日。僕のスマホに一通のメールが送られてきた。メールを開くとそこには、「チケットのご用意が出来ました。」の文字が嬉しそうに羅列されていた。僕は目を疑った。嬉しさを通り越して、本当に僕みたいな人間がツアーファイナルに参戦していいのかな、なんてネガティブな感情にまで心が到達していた。そんな感情は消えることがないまま、僕はそっと、ありがとうって心の中で大きく呟いた。忘れないように代金を支払い、忘れないようにその日をただひたすら、悲しいことや楽しいことが交互に襲ってくる生活を繰り返しながらずっと待っていた。

 

 そしてついに待ちに待った“その日”がやってきた。2月11日、ツアーPATHFINDERファイナル、さいたまスーパーアリーナ公演だ。しかし、もう数時間後には、ツアーPATHFINDERが終わってしまう。そんな寂しさを抱えながらも僕はさいたまスーパーアリーナへ足を運ぶ。3時間弱の長旅を終え、ついにさいたまスーパーアリーナに着いた。初めての会場で、初めての埼玉だ。さいたま新都心駅に降りると、「ようこそ、さいたま市へ」という大きな看板が私たちを祝福してくれている。近くには大きなショッピングモールやフードコートが充実しており、一日居ても飽きる気配を全く感じさせなかった。初めての地、初めての景色とが相まって僕は興奮と感動で胸がいっぱいだった。さいたまスーパーアリーナは“スーパー”と付くだけあってやはり会場の規模は圧巻で凄まじい。グッズの待機列に並んでいると会場内からリハの音が漏れて聞こえてくる。この音漏れを聴くと、改めてライブに来たんだなぁって思い知らされる。ここでしか味わうことのできない感情が沸々と心で蒸発して、それが感情となって表に現れる。

 

 お昼を食べ、会場内をふらふらしているとあっという間に時間は過ぎ、時計の針は開場時間の17時に。ちなみに私たちは200レベルのスタンドだった。2階席である。しかも今までの会場とは違って、アリーナも席が用意されており、全席指定なので、荷物をクロークに預けないで済む。これはとても楽で、時間に余裕を持って安心して会場に入ることができる。また会場内には、野球ドームみたいに軽食を買うことができる。私たちは、特にお腹は空いていなかったので、すぐに座席を見つけ、歩き回った疲れをほぐすかのように、席に腰を掛ける。座れるっていい。

 

 私たちは、開演時間までを他愛ない会話で埋め、隠し切れないドキドキと共に時間が過ぎるのを待っていた。PIXMOBとツイストバンド、リストバンドを腕に装着する。会場に流れる洋楽が、脈打つ行動に拍車をかける。そして会場内は暗転し、OP曲「pathfinder」へと繋がるムービーがステージの大きな画面に投影される。まるでここではないどこか、4次元空間を彷徨っているかのような、人生を映し出しているような壮大なモノクロの映像が、瞼の裏まで自然と入ってくる。ツアーで何度も目にしてきたのに、いつ見ても新鮮で綺麗な美しさを保っていた。もうこの映像がライブ会場で見れなくなると思うだけで、とても寂しい。私たちを包み込むようにして映像が終盤に差し掛かると秀ちゃん、ヒロ、チャマ、藤くんの順でステージに姿をあらわす。最初の秀ちゃんのドラムは、僕の鼓動にちゃんと響き渡って、すでに心は放心状態である。藤くんがギターを高く掲げると会場のボルテージは最高潮に達する。僕も藤くんに応えるように、会いに来たよって伝えるように、拳を精一杯高くあげる。4人が鳴らす音楽は力強くて情熱があって、そしてその中にも温かさがある。光り輝くPIXMOBのなかでpathfinderが演奏される。ただただかっこいい。そして温かい。 

 

 近未来的で先駆的な楽曲pathfinderの演奏が終わると、ステージの背景に大きく「PATHFINDER」の文字が投影され、1曲目「GO」が演奏される。風に舞う花びらのように大量のコンフェッティがライブ会場を埋め尽くす。PIXMOBも、私たちの声援に応えるように煌びやかに光輝く。2階のスタンド席から見るアリーナの景色と真っ正面の2階3階のスタンド席の景色は、一つひとつのPIXMOBがちゃんと意志を持って輝いていて、とても綺麗で儚かった。2番のBメロでは「♪ぶつかってばかり傷だらけ だから今日会いに来たんだ」と歌詞を変えて歌う。また2番サビ終わりの間奏では、「こんばんはBUMP OF CHICKENです!22歳になったぜぇぇぇぇえええええええ!!!!!!」と藤原が叫び、僕はテンションマックスで結成22周年の始まりを盛大に心から拳に込めて祝った。とどまるところを知らないように大量のコンフェッティが僕の背中を押し、それが熱気や勇気に変わる。そのかけがえのない景色は、“幸せ”って心から思えた瞬間だった。

 

 2曲目は「天体観測」。ライブバージョンの始まり方で演奏がスタートする。ライブでは何回も聞いているけれど、やはり何度聞いても素晴らしい。隙間がないように見える僕の感情の中にも、絡まった細胞を華麗に抜け出すかのごとく、するりと丁寧に入ってくる。「♪イマというほうき星 君と二人追いかけていた Oh yeah ah」。いにしえから伝わる呪文も身体に染みつき、必死に存在証明をするかのように、オーイエーアハンと叫ぶ。ラストサビ前では、「♪イマというほうき星っ↑」と藤くんが歌い上げ、私たちは「♪今も一人追いかけている」と歌う。そして空から降り注いでキラキラに輝く色とりどりのツアーテープ。僕はこれまでのツアーではすべてアリーナで、ありがたいことにツアーテープが降り注ぐなかにいた。テープを取るのに少年みたいに必死になっている自分がいた。だけれど今回は、初めてのスタンド席で、アリーナの人たちが無邪気にツアーテープに手を伸ばす姿が、微笑ましく僕の瞼の裏に焼き付けられた。こうしてスタンド席からアリーナの人たちの姿を見られるのは、とても新鮮でそれはただただ美しかった。

 

 天体観測が終わると3曲目「ray」の演奏が始まる。メンバーは颯爽と花道の先端へやってきて、私たちの歓声に応えるように、華麗に歌い演奏する。2番のAメロでは、藤くんが私たちの左右ワイパーにつられるように、胸の前で両手を使い小さくワイパーを見せる。また、「♪時々熱が出るよ」の部分では、歌詞に合わせて額にコンコンと手を当てる。こんな些細で繊細な一つひとつの動作が、僕の中に眠っている乙女心を徐々に燻ってゆく。さらにラストサビでは藤くんが「♪確かめる間もないほどっ↑」と歌い上げ、私たちは「♪生きるのは最高だ」と叫ぶ。本当にその瞬間だけは、生きていることがかけがえのないくらい最高だって心から思えた。キラキラした目の前の景色と楽曲とが相まって、僕の心のボルテージは最大公約数的に体の内部から外部に解き放たれ、いつしかそれは生きる勇気に変わっていた気がした。

 

 rayが終わると、いつものようにメンバーのMCが始まる。「こんばんはBUMP OF CHICKENです!」とチャマが言う。「僕たちのライブ初めて来たよーって人?」「あれこの曲聞いたことないなって思ったらそれは新曲です!」こんなチャマのMCにどこからか安心感を抱きながら、ただただ僕はチャマの言葉に意識を集中する。するとチャマは、「たまアリ!たまアリ!」と、今ツアーで恒例行事と化した、会場名をコールするくだりを始める。「たまアリ~!」とオペラ歌手のような高音で言ってみたり、「たま…アリ?」と質問を投げかけるように言ってみたりと、多種多様な「たまアリ」の言い方を披露して、オーディエンスを楽しませる。そして次は、アリーナ席とスタンド席でたまアリコールを分けて行う。最初は私たちがいるスタンド席から。自分の声を精一杯、メンバーの耳に届くように観客の声に乗せて叫ぶ。コールが終わるとチャマが「ナイスゥー!」と叫ぶ。次はアリーナの番だ。私たちは、たまアリコールをするアリーナ席の人たちに、心の中で精一杯声援を送る。たまアリコールが終わると「ナイスゥ―!!」とチャマが叫ぶ。こんなお茶目で可愛らしさ満開のチャマに惚気ながら、4曲目が演奏される。

 

 4曲目は「宇宙飛行士への手紙」。とても好きな楽曲の一つだ。日本ガイシホールでも聴いたけれど、何度聞いても色褪せることなく一音一音が輝いている。1番サビでは「♪それが未来の今のうちに 君と取り戻しておきたいから」と歌詞を変えていた。またラストサビでも「♪笑いあった今日はきっと 未来まで守ってくれるから」と“過去”を“今日”と歌詞を変えて歌っていた。そして、2番終わりの間奏部分では、赤と白の証明が交互に点灯し合い、花道の先端でアレンジを加えてギターソロを披露するヒロを眩しく映し出す。普段のヒロとは一味違うギャップがまた愛しい。バンプのメンバーは本当に私たち一人ひとりに向けて歌を、音を届けてくれる。今というかけがえのない時間に、少しだけ生きるスパイスを振りかけてくれる。こんな素敵な夜に、彼らと一緒に記憶を紡いだから、下手くそでも、もう少し胸張って生きていこうって思った瞬間だった。

 

 続いて演奏された曲は「Ever lasting lie」。落ち着いた曲調と、力強い藤原の唄声が、大きな会場内を、隅々まで優しく包み込むかのように響き渡る。次に6曲目は「記念撮影」。秀ちゃんのドラム音に応えるように、腕に装着したPIXMOBが白い光を放つ。その一瞬一瞬に放たれた光は、まるでパッと花火が咲いて、瞬く間に消えてゆくような儚さを伴う光のそれとどこか似ていた。そして僕もその光の一部なんだって気付いた時には、心のなかで大きな雫が静かに流れていた気がした。またあの景色が見たい。

 

 6曲目が終わると再びチャマのMCが始まる。ここではメンバーの自己紹介タイムである。チャマが「僕がチャマ、真ん中がフジ、右がヒロ、後ろがヒデ」と、こんな風に私たちにメンバーの名前を言い聞かる。すると咄嗟にチャマは「じゃあ真ん中はー?」と問う。そしたら私たちは「フジー!」と答える。するとチャマは「じゃあ右はー?」私たちは「ヒロー!」と答える。そしてチャマの問いかけは徐々に加速していき、最終的には「そいうこと!!」という言葉でメンバーの自己紹介を締めくくっていた。「どういうことやねんっ!」と心の中でノリ突っ込みを入れながら、こんな愛おしい自己紹介に、僕はふっと笑みがこぼれた。MCが終わり、7曲目に突入する。

 

 7曲目は「pinkie」。この曲を歌う前に藤くんが「この曲はずっとツアーでやってきました…。」という感じで、ツアーの終わりを告げるような、寂しい気持ちや惜しむ気持ちを全面に出しながら、感情を声にします。僕は藤くんの言葉を聞いて、ふとツアー初日の幕張公演を思い出した。あの時はチャマが「次の曲分かるかな?」と口ずさみ、その後pinkieのイントロが聞こえてきたとき、観客のざわめきと同時に僕も一緒に、言葉にならない感情で心がいっぱいになってたなぁとか。藤くんがハンドマイクに慣れてなさ過ぎて、覚束ない様子で歌ってたなぁとか。色々と記憶が頭の中で結びつく。また、当時抱えていた色んなしがらみや考え事なども同時に脳裏に浮かんできて、泣きそうになりながらも、寂しさで紛らわして、ただただ4人の演奏に耳を傾けていた。いつも藤くんは、1フレーズをヒロの方を向いて歌い、終わるとヒロの肩をポンポンと優しく叩く。ハンドマイク藤原も、初日の幕張公演と比べると格段に上達していて、とても嬉しくなったけれど寂しくもなった。

 

 8曲目は「花の名」。この曲は、歌詞変えが炸裂する曲として自分のなかで有名だ。2番Aメロでは「♪僕が今日置く唄は みんなと出会えた証拠で」と歌詞変え。また2番Bメロでは「歌う力を借りたから 聴こえるうちに返さなきゃ」と、これまた歌詞変え。おそらく藤くんは、本当にその時、その瞬間に思ったことをメロディに乗せて唄っているのだと思う。事前に、こうやって歌詞を変えて唄おうって考えていないような気がする。良い意味でずるい。さいたまスーパーアリーナに響き渡る藤くんの声が、僕の心の奥底まで痛いくらい届く。藤くんの心のなかで最大公約数的に磨かれた思いの数々は、唄声を通じて、僕の心の中に最大公倍数的に膨れ上がって、するりと感情にダイレクトに入ってくる。そしてそれは瞬く間に愛しさと寂しさと生きる勇気に変わる。拳を掲げるのを忘れるくらい、聴き入っていた。

 

 花の名が終わるとメンバーは花道の先端に移動する。今回は会場が大きいということもあり、いつもより2倍の長さの花道になっている。四方八方たくさんのお客さんに囲まれながら、9曲目「涙のふるさと」がアコースティックバージョンで演奏される。ちなみに僕は涙のふるさとをライブで聴いたのは初めてだったので、めちゃくちゃ興奮した。この日のライブは全てがすべて心に残っているけれど、中でも特に涙のふるさとがとても印象的だ。PIXMOBの演出はなかったけれど、それでもスタンド席からは一人ひとりが精一杯手を掲げている様子が窺えた。改めて、藤くんの唄声が素敵だなぁって思った。ラストサビでは「♪会いに来たよ 会いに↑来たよ」と細かいライブアレンジを加え、二つ目の“会いに来たよ”の部分を1オクターブくらい上を歌っていて、僕はもう時めきました。

 

 涙のふるさとが終わるとメンバーが喋る。藤くんは、さいたまスーパーアリーナは会場が大きいから、いつもの出っ張りが2倍出っ張りになっていること。それはなぜかというと、単純にもっとお客さんと近い距離に行きたいからということ。そして、藤くんは秀ちゃんの方に手を伸ばし、ライブを楽しんでいる秀ちゃんに、「これが笑顔というものです!」と誇らしげに私たちに紹介してくれたこと。20年前はチャリンコ漕いでみんなの家に集まって、自分たちだけで音楽をやっていたけれど、こうして20年続けてきて、皆が音楽を聴いてくれて僕たちは今幸せだってこと。ヒロは、とても楽しくやらせてもらってる、そして逆光であまり見えないけれど、上の方まで遠くまで見えているってこと。そしてチャマは、いつも私たちを楽しませようとして面白く振舞ってくれたり、時にはお茶目な一面も見せてくれたりする。こんな当たり前のようで当たり前じゃない4人の楽しいMCが終わると、藤くんの「もう一曲、この出っ張りでやっていいですか?」という言葉とともに10曲目の演奏が始まる。

 

 10曲目に演奏されたのは「You were here」。チャマのベースから始まる。さっきのお茶目でかわいいMCとは打って変わって、悲しくて寂しい曲調で車輪が回る。これまで参戦したPFツアーが走馬灯の様に頭の中に流れてゆく。この時、ツアーが終わってしまう寂しさを感じた。歌詞のなかの“君”の箇所で藤くんは、観客を指差したのを見逃さなかった。彼のなかでは本当に1対何万通りじゃなくて、1対1が何万通りあるという考えが強く心に根付いている。本当にそう思った瞬間だった。You were hereが終わると、メンバーは2倍出っ張りをファッションショーみたいに、優雅に逞しい姿で歩いてゆく。それにしても本当に長い。軽く30mくらいはあった気がする。ステージに戻ると、再び曲が演奏される。

 

 11曲目に演奏された楽曲は「アンサー」。今ツアーでは固定セトリ曲になっており、何回も聴いてきたが、やはりいつまでも輝きを放っていて、新鮮でかつ美しい。初めてアンサーを聴いた時の、この曲ライブで聴いたらすごく盛り上がりそうだなぁという、いつかの幻想が今、目の前で繰り広げられている。12曲目は「分別奮闘記」。静岡公演で聴いた時の記憶が瞬時に想起される。個人的に、分別奮闘記はライブ化けする曲といったイメージがある。ツアーが始まった当初はまさかこの曲が、セトリに組み込まれてくるなんて想像もしていなかった。そのせいもあってか、初めて聴いたときは、すごく鳥肌が立ったのを覚えている。2番Bメロでは「♪持ってかれてないぜっ?紙が貼ってあるぜっ?」と歌詞の後ろに疑問符をつけ足すように、意気揚々と歌い上げる姿が印象的だった。正直ライブで聴いて、以前よりもこの曲が滅茶苦茶好きになった。そして気付いたら、最後の「♪ウォーウォーオー ウォーヘイヘイヘイ」の部分を無意識に口ずさんでいた自分がいた。お客さんと一体になって声を出せたことが何よりも嬉しかったし楽しかった。ありがとう。

 

 13曲目は「宝石になった日」。アップテンポの曲調で私たちのボルテージを最高到達点にまで連れていってくれる。そんな曲。ラストサビに差し掛かる前の「♪君の知ってる僕は 会いたいよ」の“会いたいよ”の部分を、とても寂しそうに、それでも力強く歌い上げる姿が印象的だった。“こんなに寂しいから大丈夫だと思う”藤原という人は何で、こんなにいつも寂しさを感じていて、それを大丈夫だって言い切れるのだろう。どうしていいのか分からない感情をこんなにも愛することができる藤原がたまらなく好きだ。

 

 曲と曲の間で、観客席からはメンバーの名前を叫んだり、ときにはそれに対して笑いが起きたりする。僕はこの時間が、ライブでしか味わうことのできない雰囲気が凝縮された魔法の時間みたいですごく好きだ。また、メンバーの名前だけではなく、「ありがとうー!」と叫ぶ人もいる。僕はこの5文字の言葉を聞くたび、何度も泣きそうになっていた。というより、泣くのを我慢していたと言ったほうが良いかもしれない。ありがとうの5文字じゃ、とてもじゃないけれど足りないほど、彼らには感謝の気持ちを心から捧げたい。彼らの楽曲から、生きる勇気やありのままの姿で生きていいんだよってことを教えてもらったから。それは何にも代えがたい事実で、本当に助けてもらったから僕は胸を張って言える。拙い言葉だけれど、ありがとう。何回言っても足りない気がする。ありがとう。

 

 宝石になった日の演奏が終わると、藤くんが「声聞かせてもらっていいですか…?」と私たちに問いかける。こんな藤くんの言葉から紡がれた楽曲は14曲目「虹を待つ人」だった。感情の交錯で渋滞している頭の中に追い打ちをかけるように、虹を待つ人のイントロがテンションを累乗するように、身体全体を響かせる。歌詞に沿うように、まさに私たちの身体に音が飛び込んで走る。サビでは、藤くんの唄声に続いて「♪ウォーウォーウォーウォー!」と、力を振り絞って限りなくゼロに近い大声で歌う。この時ばかりは、幼い体で外をはしゃぎ回る少年みたいな心で、精一杯声を出していた自分がいた。会場全体が一体となって、一緒に叫ぶあの熱気と圧力に魅了されながらも、僕はその一瞬一瞬を見逃さずに、光り輝くPIXMOBを高らかに掲げて、声をあげる。ラストサビに差し掛かる前は、「♪どこまでも 歌えさいたま!」と優しく煽りかけ、その直後に大量のツアーテープが発射され、楽曲と演出に彩りを添えるように、僕の心と会場のボルテージを最骨頂にする。感謝の気持ちを、喉の奥がはち切れそうになるくらい、飛び交うメロディに乗せて大声で叫ぶ。こんな美しくて眩しい演出に、自然と拍手と笑みがこぼれた。

 

 虹を待つ人の演奏が終わると、15曲目「fire sign」が始まる。もうイントロで泣きそうになっていた。なぜならこの曲は、もうすぐライブが終わっちゃうことを仄めかすような気がしたからだ。楽しいけれどとても寂しい。そんな複雑な感情が入り混じりながら、それでも、拳だけは力いっぱい掲げて彼らに見せる。サビの「♪微かでも 見えなくても 命の火が揺れてる」の“命の”に該当する箇所は、藤くんはたまに裏声を使って歌っていた。そして、今ツアーで恒例となった、ヒロの合唱の仕切りが始まる。いつもより長い出っ張りを、ギターを弾きながら歩いていき、先端のマイクスタンドに立つ。「最初は女子から!」「次は男子!下パート歌って!」と、ちょうど私たちの合唱に揉み消されて、上手くマイクを伝っていないヒロの声が会場全体に響き渡る。頑張っているヒロに応えようと僕は必死で聞き耳を立てて、ヒロの紡いだ言葉を理解して、頭に落とし込み声に出す。「♪ナーナ ナナナナナナーナ」と、メンバーの演奏に負けないように、メンバーの気持ちに応えるように、精一杯声を紡ぐ。女子の上パートと男子の下パートがマッチして、会場全体で綺麗なハーモニーを生み出す。途中でメンバーのチャマと藤くんも出っ張りの先端にやってきて、一緒になって演奏する。マイクスタンドの前にはヒロに代わり藤くんが立つ。藤くんの力強い歌声が会場の隅々まで広がって響く。それは瞬く間に僕の心の隙間まで入り込んできて、自然と合唱する声も大きくなる。音と言葉だけで、こんなにも人は元気になれるし、生きる活力をもらえる。なんて素敵で幸せなことなんだろう。ずっとこの合唱を続けていたい、聴いていたい、なんて、叶うはずもない物思いにふけながら、fire signの演奏は幕を閉じた。

 

 「今日はどうもありがとう。」こんな言葉を藤くんが呟きながら、演奏された16曲目の曲は「リボン」。ああもう終わっちゃう。本当に寂しかった。けれど、そんなことを思う間もなく、曲は展開されていくから、僕は必死に悲しさと切なさに負けないように、PIXMOBと一緒に右腕を高く上げる。2番サビでは「♪意地や恥ずかしさに 負けないで心で 正面から受け入れるよ」と歌詞変えをする。4人で結んできたリボンが、きちんと形になって私たちの目の前に、ただただ存在していた、音を鳴らしていた。そんな当たり前のようで当たり前じゃない事実が、奇跡を目の当たりにしているかのような感情で、心が溢れ出しそうになっていた。僕は最後の一音まで身体で受け止めた。

 

 リボンの演奏が終わると、会場が明転し、メンバーは「ありがとう!」と言い放ち舞台裏へ。私たちは幸せな気持ちを抱えたまま、座席に腰をおろす。メンバーが舞台裏へ去ってゆくと、遠くの方からたまアリコールが聞こえてくる。私たちはそのコールにつられるように、「たまアリ!たまアリ!」と連呼する。すると舞台は明転し、メンバーがツアーTシャツに着替えた姿で舞台上にあがってくる。その時、チャマはいつものようにスマホ片手に、お客さんをカメラに収めようとぐるぐる回して花道を歩いてゆく。僕はチャマにスマホを向けられたら、子どものように無邪気にピースサインをする。長くも短いスマホの動画撮影が終わると、チャマは「アンコールどうもありがとうー!!」と叫ぶ。それから、ファイナル限定グッズの話、DVD/Blu-rayの話を繰り広げたのち、アンコール曲が演奏される。

 

 アンコール1曲目は「ガラスのブルース」。秀ちゃんの力強いドラムから始まったガラスのブルースは、どこか懐かしい気持ちと寂しい気持ちを漂わせながら展開されてゆく。2番Aメロでは「ガラスの目をしたさいたま叫べ!」と歌詞を変え、会場のボルテージをあげます。さらにいつものように2番終わりのヒロのギターソロ前では藤くんが「ギター!増川弘明!」と言い、ヒロのギターソロが終わると、私たちが次の歌詞を合唱する。そして、次の箇所でも藤くんが「♪これからツライ事がもしあったなら 皆は唄いだすっ↑」とキーを上げ、私たちは「♪ガラスの眼を持つ 猫を思い出して 空を見上げて ガラスのブルースを」と力を振り絞って叫ぶ。いつもは周りの人たちの声に圧倒されて、自分の出す声は聞こえないけれど、この時は少し自分の出す声が耳に聞こえた気がした。それくらい、大きな声を出していた。そして何より、お客さんと一つになれたような気がして本当にただ嬉しかった。

 

 アンコール2曲目は「流星群」。イントロが寂しさをさらに後押しする。本当にもう終わっちゃうのかぁと、心の中で悲しいため息をつきながら、楽曲に耳を澄ます。寂しさを胸に抱えたまま、僕の心を慰めるように、右腕のPIXMOBはいつまでも輝き続けていた。曲の最後には藤くんは「この曲が終わればサヨナラだ」と歌詞を付け足し、寂しい気持ちを音に乗せて私たちに精一杯伝えてくれた。嬉しかった、けどとても寂しくなった。それはツアーの終わりを知ってしまったから。僕は優しくて温かい拍手を彼らに送った。伝えきれないくらいのありがとうを、拍手に込めて送った。

 

 鳴りやまない拍手の中、会場は明転し、メンバーはタオルやリストバンド、ツイストバンドをアリーナ席に向けて投げる。チャマは服を脱いで上半身裸になる。いつ見てもチャマは腹筋が割れている。僕は正直メンバーの筋肉には興味がないけれど、チャマだけはいつも胸あたりをまじまじと見てしまう。本当に理想的な逆三角形が完成されていて美しい。チャマは「みんなありがとー!!」と言い放ち、舞台裏へと駆け出していく。秀ちゃんは満面の笑みでドラム席からバイバーイと大きく手を振る。ヒロは「最初はとても暑かったけれど今はとても寒い…………..季節なので、みんな風邪ひかないようにね!!」と、完全に句読点で句切る位置を間違え、誤解を招いてしまうような最後の一言で、会場に笑いを誘います。でもそんなヒロがヒロらしくてとてもかわいかった。腕をかきかきしながらも、最後はぴょんぴょんしながら「ありがとー!!」と、私たちのハートをがっちり掴んでステージ裏へ向かいます。そのときヒロは、まさかの着ていたTシャツを脱ぎ、上半身裸に。僕はあまりの突然の出来事に一瞬何が起きているのか理解することが出来ませんでしたが、ヒロの胸の筋肉はばっちりこの瞼の裏に焼き付けておいたので、今でも鮮明に思い出すことができます。チャマと同じくらい筋肉がついていたので、良い意味でびっくりしました。とてもズルくて、こんなのヒロを好きになる以外道はありません。会場内はキャーというような、悲鳴に近いときめきが声に漏れ、女子のハートが見事に射貫かれていました。そして最後に藤くんがMCをします。

 

 10秒近く深々と丁寧にお辞儀をして、マイクスタンドに立ちます。「今日は本当にどうもありがとう。さっきも言ったんだけど、本当に何周年とか全く気にしてなくて、20年前はチャリ漕いでメンバーの家に行って、バンドの練習をして、そこから曲が少しずつ出来てきて、始めは自分たちだけで音楽をやっていたけれど、次第にこうして僕たちの音楽を聞いてくれる人たちが出てきて、みんなと一緒になって歌う曲とかもできたりして、本当に10年、20年前とかは想像もしてなくて、こうして今君たちに音楽を聞いてもらえてとても嬉しいです。いつも僕は最後のMCで感極まっちゃって、上手くまとまんないんだけど、心から思いました。バンド組んで本当に良かった。」こんな心から漏れた言葉たちが私たちに優しく降りかかります。藤原という人は何でこんなにも、素直な言葉をさらっと言えてしまうんだろう。僕は丁寧に紡ぐ藤くんの言葉をひとつひとつ零さないように抱きしめ、拍手を送ります。

 

 そして、MCが終わった途端、藤くんは急に「ちょっとだけ時間大丈夫?あ、時間ヤバいって人は全然大丈夫だよ!」と言い、舞台裏にいるメンバーの元へ行きます。この時の会場の、驚きと期待と抑えられない衝動が入り混じり、自然とざわめきが起こります。ちなみにこの時の僕の頭のIQはおそらく2くらいだったと思います。“ヤバい”の3文字しか頭の中になかったです。少ししたら藤くんが再びステージに戻ってきて、なんとギターを掲げ始めます。「さっきメンバーに確認してきて、今からメンバーにも聞かせていない曲をやりたいと思います。上手く歌えるかなぁ…。」と、まだ全然心の整理がついていない私たちに追い打ちをかけるかのように、藤くんが一人で新曲を歌い始めます。本当に人が唖然とするときって、記憶という概念がなくなります。メロディと歌詞は何となく覚えているけれど、本当に曖昧だ。ただ唯一断言できることは、最後の歌詞は「行ってきます」だったということ。あれだけ迷子だったのに、何か目的地が定まったような、また新しい一歩を踏み出しているような、期待感と新鮮味あふれる楽曲だったような、そんなことをあの時思った。ツアーの最初は「全国行ってきます」って言い放って、ツアーファイナルでも「行ってきます」と締めくくった。本当に彼らに迷いはないように感じた。でもいつでも彼らからは、迷子のままでも大丈夫よって言って、側に寄り添って支えてくれる気がする。これからもずっと。

 

 「温かくして寝てね!おやすみ!バイバイ!」最後の藤くんの“バイバイ”がとても寂しそうだった。僕もバイバイって手を大きく振った。ありがとう。そしてPATHFINDERツアーお疲れさまでした。

 

 会場を出て、“SAITAMA SUPER ARENA”の文字を見ると、なぜか急にとても寂しくなった。そして何より寒かった。私たちはフォトブースで写真を撮ってもらい、さいたまスーパーアリーナを後にした。次ここに来るのはいつになるんだろう。なんて、そんなことをふと思いながら、駅までの帰り道、何度も後ろを振り返りながら、帰路につく。あれから2週間経った今でも、ライブのことを鮮明に思い出すことができる。それはたぶん、心が揺さぶられて、感情が何度も動かされたから。そして何より大切な人とライブを見ることができたからだと思う。BUMPさんは、ゆっくり休んでもらって、またライブしてほしいなぁ。こんなにも素敵なライブを実現していただいたスタッフの方々に感謝いたします。本当に大好き。

 

 

ではでは!☆☆☆☆

 

          参考:LiveFans | ライブ・セットリスト情報サービス【 LiveFans (ライブファンズ) 】