「親知らず抜歯 TOUR 2022 -Final-」ライブレポート "ベテラン歯科医師が奏でる素敵なアンサンブル"
私は3月13日(日)に、近所の歯科クリニックにて、親知らず抜歯ツアーファイナルをおこなった。抜歯がおこなわれたのは右下と左上の親知らずで、それぞれ約1ヶ月の間隔を空けてゆっくり計画的に進めていったという。今回のツアーは小中学生の頃にリリースした「歯並びの矯正」以来の歯医者さんで、実に10年以上ぶりのライブツアーとなった。
ツアー開催の発端となった出来事は、去年の年末から少し奥歯に痛みを感じ始めたことである。当本人もこのまま放っておくとヤバいのではないかという危機感を感じていたという。そのため、急ピッチで近所の歯医者さんに予約の電話を入れ、隠せないドキドキを纏いながらツアーは開催された。
かなり久々の歯医者だったため、前日は眠れないほど緊張しており、脳内に「親知らず抜歯」というワードだけが巡り巡っていたという。「親知らず抜歯」という、今までに経験したことのない大きな壁を目の前に、自分の中にある「弱さ」や「不安」と戦いながらも、ツアーは幕を開けた。
リクライニング式のスーパーチェアユニットと全自動うがい台といった豪華なステージセットや、私の顔を明るく照らす照明演出など、親知らず抜歯のパフォーマンスをより効率的におこなう準備が整った会場で「親知らず抜歯ツアー」は開演時刻を迎える。
リクライニングユニットがゆっくり水平に傾き、きらびやかな舞台照明が私を照らす。歯医者独特のあの器具の「ウィーン」という音が会場に響き渡り、会場のボルテージは最高潮に達した。院長の「口をあーんとしてください」が始まると、私は成す術もないままにおもむろに口を開ける。醜態をさらすかのような私の姿は、幸い目元に覆いかぶさっていたタオルによって何とか事なきを得た気がした。すると安堵する間もなく「表面麻酔」が繰り広げられる。そして畳み掛けるように「ちょっとチクッとしますよ~」からの「麻酔注射」が始まり、五臓六腑のドキドキに追い打ちをかけていく。
冷静に考えれば、歯の根元に注射をするなんで正気の沙汰じゃないような気がするが、できるだけ不安にならないように、とても丁寧で温かみのある言葉で接してくれる院長さんのMCや、歯科衛生士さんの合の手で、張りつめていた心が少し和らいだ気がした。
「麻酔注射」が終わったあとは、いよいよ抜歯に取り掛かっていく。「痛かったら右手を挙げてくださいね」という院長さんの言葉がオーディエンスに響き渡る。私は、院長さんの言葉に応えられるか分からなかったが、抜歯最中に少し痛みを感じ、咄嗟に右手を挙げた。それはステージとオーディエンスが一体となった瞬間だった。決死の覚悟で挙げた右腕は「麻酔注射 追加ver.」を呼び、さらにフロアは激しい熱気に包まれる。再び、院長さんからの「痛かったら右手を挙げてくださいね」という言葉が体に染みわたる。2回目は右手を挙げることなく、院長さんと歯科衛生士さんの素敵なアンサンブルによって、無事に親知らずの抜歯が終了した。
最後に、抜歯した奥歯にガーゼを詰めてもらい、ようやく抜歯が終わった安心感を噛み締めるように、強くガーゼを噛んだ。オーディエンスからは、割れんばかりの拍手喝采が飛び交っていた。親知らず抜歯という未知の出来事から来る「不安」や「緊張」から解き放たれた涙は、奥歯に詰めてもらったガーゼに沁み込んだ綺麗な赤い涙に変わっていた。
こうして無事に「親知らず抜歯 TOUR 2022 -Final-」は、先進の医療技術と温かい人たちの温かい言葉に包まれながら幕を閉じた。
おわりーーー。