Gummy Gummy Night Festival

時空を旅する

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「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」 2/11 さいたまスーパーアリーナ ライブレポート

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 思い返すとあれは約9か月前。2017年5月1日、BUMP OF CHICKENツアーPATHFINDERが発表された日だ。あまりの突然すぎる大きな情報に僕は戸惑いと嬉しさを隠せなかった。反射的に感情が昂ぶってしまった。彼らはいつもこうだ。大きくて膨大な情報を一気に発表して、私たちの感情を狂わせてくる。追いつかない情報に必死になって食らいつき、何とかすべての情報を把握したときには、どこからか名前のない涙が、心の底から溢れ出ていた。止まらない胸の鼓動がワクワクやドキドキに変わり、早く9月にならないかなって思いながら、変わらない生活とただひたすら戦っていた。

 

 僕はこれまで、ありがたいことに何度かBUMPのライブに参戦してきたけれど、いつも地元に一番近い場所、名古屋公演にしか応募せず、複数公演参戦している人たちを見ては、いつも後悔していた。だから今回は、出来るだけ頑張ってチケットを手に入れようと、ただ漠然と思いながら、名古屋公演以外にも行ける範囲の場所を絞り、覚束ない手つきを駆使してイープラスで申し込んだ。そして月日が経つと、またBUMPさんは私たちに追い打ちをかけるように情報が解禁されてゆく。そう、追加公演の情報だ。2回に及ぶ追加公演の発表でツアー公演数は初めの発表の公演数の約2倍の31公演となった。ツアーファイナルは2月11日のBUMP OF CHICKEN結成22周年を迎える節目の日となった。公演場所はさいたまスーパーアリーナだ。僕は迷うことなく応募した。なぜならまた同じような後悔を繰り返すと思ったからだ。でも、必ずチケットが手に入るとは限らない。というか、えげつない倍率で、チケットが取れるなんて微量も思っていなかった。こればかりは本当に運だから、チケットが取れなかったら潔く諦めようなんて思ったりもしていた。そして結果発表の日。僕のスマホに一通のメールが送られてきた。メールを開くとそこには、「チケットのご用意が出来ました。」の文字が嬉しそうに羅列されていた。僕は目を疑った。嬉しさを通り越して、本当に僕みたいな人間がツアーファイナルに参戦していいのかな、なんてネガティブな感情にまで心が到達していた。そんな感情は消えることがないまま、僕はそっと、ありがとうって心の中で大きく呟いた。忘れないように代金を支払い、忘れないようにその日をただひたすら、悲しいことや楽しいことが交互に襲ってくる生活を繰り返しながらずっと待っていた。

 

 そしてついに待ちに待った“その日”がやってきた。2月11日、ツアーPATHFINDERファイナル、さいたまスーパーアリーナ公演だ。しかし、もう数時間後には、ツアーPATHFINDERが終わってしまう。そんな寂しさを抱えながらも僕はさいたまスーパーアリーナへ足を運ぶ。3時間弱の長旅を終え、ついにさいたまスーパーアリーナに着いた。初めての会場で、初めての埼玉だ。さいたま新都心駅に降りると、「ようこそ、さいたま市へ」という大きな看板が私たちを祝福してくれている。近くには大きなショッピングモールやフードコートが充実しており、一日居ても飽きる気配を全く感じさせなかった。初めての地、初めての景色とが相まって僕は興奮と感動で胸がいっぱいだった。さいたまスーパーアリーナは“スーパー”と付くだけあってやはり会場の規模は圧巻で凄まじい。グッズの待機列に並んでいると会場内からリハの音が漏れて聞こえてくる。この音漏れを聴くと、改めてライブに来たんだなぁって思い知らされる。ここでしか味わうことのできない感情が沸々と心で蒸発して、それが感情となって表に現れる。

 

 お昼を食べ、会場内をふらふらしているとあっという間に時間は過ぎ、時計の針は開場時間の17時に。ちなみに私たちは200レベルのスタンドだった。2階席である。しかも今までの会場とは違って、アリーナも席が用意されており、全席指定なので、荷物をクロークに預けないで済む。これはとても楽で、時間に余裕を持って安心して会場に入ることができる。また会場内には、野球ドームみたいに軽食を買うことができる。私たちは、特にお腹は空いていなかったので、すぐに座席を見つけ、歩き回った疲れをほぐすかのように、席に腰を掛ける。座れるっていい。

 

 私たちは、開演時間までを他愛ない会話で埋め、隠し切れないドキドキと共に時間が過ぎるのを待っていた。PIXMOBとツイストバンド、リストバンドを腕に装着する。会場に流れる洋楽が、脈打つ行動に拍車をかける。そして会場内は暗転し、OP曲「pathfinder」へと繋がるムービーがステージの大きな画面に投影される。まるでここではないどこか、4次元空間を彷徨っているかのような、人生を映し出しているような壮大なモノクロの映像が、瞼の裏まで自然と入ってくる。ツアーで何度も目にしてきたのに、いつ見ても新鮮で綺麗な美しさを保っていた。もうこの映像がライブ会場で見れなくなると思うだけで、とても寂しい。私たちを包み込むようにして映像が終盤に差し掛かると秀ちゃん、ヒロ、チャマ、藤くんの順でステージに姿をあらわす。最初の秀ちゃんのドラムは、僕の鼓動にちゃんと響き渡って、すでに心は放心状態である。藤くんがギターを高く掲げると会場のボルテージは最高潮に達する。僕も藤くんに応えるように、会いに来たよって伝えるように、拳を精一杯高くあげる。4人が鳴らす音楽は力強くて情熱があって、そしてその中にも温かさがある。光り輝くPIXMOBのなかでpathfinderが演奏される。ただただかっこいい。そして温かい。 

 

 近未来的で先駆的な楽曲pathfinderの演奏が終わると、ステージの背景に大きく「PATHFINDER」の文字が投影され、1曲目「GO」が演奏される。風に舞う花びらのように大量のコンフェッティがライブ会場を埋め尽くす。PIXMOBも、私たちの声援に応えるように煌びやかに光輝く。2階のスタンド席から見るアリーナの景色と真っ正面の2階3階のスタンド席の景色は、一つひとつのPIXMOBがちゃんと意志を持って輝いていて、とても綺麗で儚かった。2番のBメロでは「♪ぶつかってばかり傷だらけ だから今日会いに来たんだ」と歌詞を変えて歌う。また2番サビ終わりの間奏では、「こんばんはBUMP OF CHICKENです!22歳になったぜぇぇぇぇえええええええ!!!!!!」と藤原が叫び、僕はテンションマックスで結成22周年の始まりを盛大に心から拳に込めて祝った。とどまるところを知らないように大量のコンフェッティが僕の背中を押し、それが熱気や勇気に変わる。そのかけがえのない景色は、“幸せ”って心から思えた瞬間だった。

 

 2曲目は「天体観測」。ライブバージョンの始まり方で演奏がスタートする。ライブでは何回も聞いているけれど、やはり何度聞いても素晴らしい。隙間がないように見える僕の感情の中にも、絡まった細胞を華麗に抜け出すかのごとく、するりと丁寧に入ってくる。「♪イマというほうき星 君と二人追いかけていた Oh yeah ah」。いにしえから伝わる呪文も身体に染みつき、必死に存在証明をするかのように、オーイエーアハンと叫ぶ。ラストサビ前では、「♪イマというほうき星っ↑」と藤くんが歌い上げ、私たちは「♪今も一人追いかけている」と歌う。そして空から降り注いでキラキラに輝く色とりどりのツアーテープ。僕はこれまでのツアーではすべてアリーナで、ありがたいことにツアーテープが降り注ぐなかにいた。テープを取るのに少年みたいに必死になっている自分がいた。だけれど今回は、初めてのスタンド席で、アリーナの人たちが無邪気にツアーテープに手を伸ばす姿が、微笑ましく僕の瞼の裏に焼き付けられた。こうしてスタンド席からアリーナの人たちの姿を見られるのは、とても新鮮でそれはただただ美しかった。

 

 天体観測が終わると3曲目「ray」の演奏が始まる。メンバーは颯爽と花道の先端へやってきて、私たちの歓声に応えるように、華麗に歌い演奏する。2番のAメロでは、藤くんが私たちの左右ワイパーにつられるように、胸の前で両手を使い小さくワイパーを見せる。また、「♪時々熱が出るよ」の部分では、歌詞に合わせて額にコンコンと手を当てる。こんな些細で繊細な一つひとつの動作が、僕の中に眠っている乙女心を徐々に燻ってゆく。さらにラストサビでは藤くんが「♪確かめる間もないほどっ↑」と歌い上げ、私たちは「♪生きるのは最高だ」と叫ぶ。本当にその瞬間だけは、生きていることがかけがえのないくらい最高だって心から思えた。キラキラした目の前の景色と楽曲とが相まって、僕の心のボルテージは最大公約数的に体の内部から外部に解き放たれ、いつしかそれは生きる勇気に変わっていた気がした。

 

 rayが終わると、いつものようにメンバーのMCが始まる。「こんばんはBUMP OF CHICKENです!」とチャマが言う。「僕たちのライブ初めて来たよーって人?」「あれこの曲聞いたことないなって思ったらそれは新曲です!」こんなチャマのMCにどこからか安心感を抱きながら、ただただ僕はチャマの言葉に意識を集中する。するとチャマは、「たまアリ!たまアリ!」と、今ツアーで恒例行事と化した、会場名をコールするくだりを始める。「たまアリ~!」とオペラ歌手のような高音で言ってみたり、「たま…アリ?」と質問を投げかけるように言ってみたりと、多種多様な「たまアリ」の言い方を披露して、オーディエンスを楽しませる。そして次は、アリーナ席とスタンド席でたまアリコールを分けて行う。最初は私たちがいるスタンド席から。自分の声を精一杯、メンバーの耳に届くように観客の声に乗せて叫ぶ。コールが終わるとチャマが「ナイスゥー!」と叫ぶ。次はアリーナの番だ。私たちは、たまアリコールをするアリーナ席の人たちに、心の中で精一杯声援を送る。たまアリコールが終わると「ナイスゥ―!!」とチャマが叫ぶ。こんなお茶目で可愛らしさ満開のチャマに惚気ながら、4曲目が演奏される。

 

 4曲目は「宇宙飛行士への手紙」。とても好きな楽曲の一つだ。日本ガイシホールでも聴いたけれど、何度聞いても色褪せることなく一音一音が輝いている。1番サビでは「♪それが未来の今のうちに 君と取り戻しておきたいから」と歌詞を変えていた。またラストサビでも「♪笑いあった今日はきっと 未来まで守ってくれるから」と“過去”を“今日”と歌詞を変えて歌っていた。そして、2番終わりの間奏部分では、赤と白の証明が交互に点灯し合い、花道の先端でアレンジを加えてギターソロを披露するヒロを眩しく映し出す。普段のヒロとは一味違うギャップがまた愛しい。バンプのメンバーは本当に私たち一人ひとりに向けて歌を、音を届けてくれる。今というかけがえのない時間に、少しだけ生きるスパイスを振りかけてくれる。こんな素敵な夜に、彼らと一緒に記憶を紡いだから、下手くそでも、もう少し胸張って生きていこうって思った瞬間だった。

 

 続いて演奏された曲は「Ever lasting lie」。落ち着いた曲調と、力強い藤原の唄声が、大きな会場内を、隅々まで優しく包み込むかのように響き渡る。次に6曲目は「記念撮影」。秀ちゃんのドラム音に応えるように、腕に装着したPIXMOBが白い光を放つ。その一瞬一瞬に放たれた光は、まるでパッと花火が咲いて、瞬く間に消えてゆくような儚さを伴う光のそれとどこか似ていた。そして僕もその光の一部なんだって気付いた時には、心のなかで大きな雫が静かに流れていた気がした。またあの景色が見たい。

 

 6曲目が終わると再びチャマのMCが始まる。ここではメンバーの自己紹介タイムである。チャマが「僕がチャマ、真ん中がフジ、右がヒロ、後ろがヒデ」と、こんな風に私たちにメンバーの名前を言い聞かる。すると咄嗟にチャマは「じゃあ真ん中はー?」と問う。そしたら私たちは「フジー!」と答える。するとチャマは「じゃあ右はー?」私たちは「ヒロー!」と答える。そしてチャマの問いかけは徐々に加速していき、最終的には「そいうこと!!」という言葉でメンバーの自己紹介を締めくくっていた。「どういうことやねんっ!」と心の中でノリ突っ込みを入れながら、こんな愛おしい自己紹介に、僕はふっと笑みがこぼれた。MCが終わり、7曲目に突入する。

 

 7曲目は「pinkie」。この曲を歌う前に藤くんが「この曲はずっとツアーでやってきました…。」という感じで、ツアーの終わりを告げるような、寂しい気持ちや惜しむ気持ちを全面に出しながら、感情を声にします。僕は藤くんの言葉を聞いて、ふとツアー初日の幕張公演を思い出した。あの時はチャマが「次の曲分かるかな?」と口ずさみ、その後pinkieのイントロが聞こえてきたとき、観客のざわめきと同時に僕も一緒に、言葉にならない感情で心がいっぱいになってたなぁとか。藤くんがハンドマイクに慣れてなさ過ぎて、覚束ない様子で歌ってたなぁとか。色々と記憶が頭の中で結びつく。また、当時抱えていた色んなしがらみや考え事なども同時に脳裏に浮かんできて、泣きそうになりながらも、寂しさで紛らわして、ただただ4人の演奏に耳を傾けていた。いつも藤くんは、1フレーズをヒロの方を向いて歌い、終わるとヒロの肩をポンポンと優しく叩く。ハンドマイク藤原も、初日の幕張公演と比べると格段に上達していて、とても嬉しくなったけれど寂しくもなった。

 

 8曲目は「花の名」。この曲は、歌詞変えが炸裂する曲として自分のなかで有名だ。2番Aメロでは「♪僕が今日置く唄は みんなと出会えた証拠で」と歌詞変え。また2番Bメロでは「歌う力を借りたから 聴こえるうちに返さなきゃ」と、これまた歌詞変え。おそらく藤くんは、本当にその時、その瞬間に思ったことをメロディに乗せて唄っているのだと思う。事前に、こうやって歌詞を変えて唄おうって考えていないような気がする。良い意味でずるい。さいたまスーパーアリーナに響き渡る藤くんの声が、僕の心の奥底まで痛いくらい届く。藤くんの心のなかで最大公約数的に磨かれた思いの数々は、唄声を通じて、僕の心の中に最大公倍数的に膨れ上がって、するりと感情にダイレクトに入ってくる。そしてそれは瞬く間に愛しさと寂しさと生きる勇気に変わる。拳を掲げるのを忘れるくらい、聴き入っていた。

 

 花の名が終わるとメンバーは花道の先端に移動する。今回は会場が大きいということもあり、いつもより2倍の長さの花道になっている。四方八方たくさんのお客さんに囲まれながら、9曲目「涙のふるさと」がアコースティックバージョンで演奏される。ちなみに僕は涙のふるさとをライブで聴いたのは初めてだったので、めちゃくちゃ興奮した。この日のライブは全てがすべて心に残っているけれど、中でも特に涙のふるさとがとても印象的だ。PIXMOBの演出はなかったけれど、それでもスタンド席からは一人ひとりが精一杯手を掲げている様子が窺えた。改めて、藤くんの唄声が素敵だなぁって思った。ラストサビでは「♪会いに来たよ 会いに↑来たよ」と細かいライブアレンジを加え、二つ目の“会いに来たよ”の部分を1オクターブくらい上を歌っていて、僕はもう時めきました。

 

 涙のふるさとが終わるとメンバーが喋る。藤くんは、さいたまスーパーアリーナは会場が大きいから、いつもの出っ張りが2倍出っ張りになっていること。それはなぜかというと、単純にもっとお客さんと近い距離に行きたいからということ。そして、藤くんは秀ちゃんの方に手を伸ばし、ライブを楽しんでいる秀ちゃんに、「これが笑顔というものです!」と誇らしげに私たちに紹介してくれたこと。20年前はチャリンコ漕いでみんなの家に集まって、自分たちだけで音楽をやっていたけれど、こうして20年続けてきて、皆が音楽を聴いてくれて僕たちは今幸せだってこと。ヒロは、とても楽しくやらせてもらってる、そして逆光であまり見えないけれど、上の方まで遠くまで見えているってこと。そしてチャマは、いつも私たちを楽しませようとして面白く振舞ってくれたり、時にはお茶目な一面も見せてくれたりする。こんな当たり前のようで当たり前じゃない4人の楽しいMCが終わると、藤くんの「もう一曲、この出っ張りでやっていいですか?」という言葉とともに10曲目の演奏が始まる。

 

 10曲目に演奏されたのは「You were here」。チャマのベースから始まる。さっきのお茶目でかわいいMCとは打って変わって、悲しくて寂しい曲調で車輪が回る。これまで参戦したPFツアーが走馬灯の様に頭の中に流れてゆく。この時、ツアーが終わってしまう寂しさを感じた。歌詞のなかの“君”の箇所で藤くんは、観客を指差したのを見逃さなかった。彼のなかでは本当に1対何万通りじゃなくて、1対1が何万通りあるという考えが強く心に根付いている。本当にそう思った瞬間だった。You were hereが終わると、メンバーは2倍出っ張りをファッションショーみたいに、優雅に逞しい姿で歩いてゆく。それにしても本当に長い。軽く30mくらいはあった気がする。ステージに戻ると、再び曲が演奏される。

 

 11曲目に演奏された楽曲は「アンサー」。今ツアーでは固定セトリ曲になっており、何回も聴いてきたが、やはりいつまでも輝きを放っていて、新鮮でかつ美しい。初めてアンサーを聴いた時の、この曲ライブで聴いたらすごく盛り上がりそうだなぁという、いつかの幻想が今、目の前で繰り広げられている。12曲目は「分別奮闘記」。静岡公演で聴いた時の記憶が瞬時に想起される。個人的に、分別奮闘記はライブ化けする曲といったイメージがある。ツアーが始まった当初はまさかこの曲が、セトリに組み込まれてくるなんて想像もしていなかった。そのせいもあってか、初めて聴いたときは、すごく鳥肌が立ったのを覚えている。2番Bメロでは「♪持ってかれてないぜっ?紙が貼ってあるぜっ?」と歌詞の後ろに疑問符をつけ足すように、意気揚々と歌い上げる姿が印象的だった。正直ライブで聴いて、以前よりもこの曲が滅茶苦茶好きになった。そして気付いたら、最後の「♪ウォーウォーオー ウォーヘイヘイヘイ」の部分を無意識に口ずさんでいた自分がいた。お客さんと一体になって声を出せたことが何よりも嬉しかったし楽しかった。ありがとう。

 

 13曲目は「宝石になった日」。アップテンポの曲調で私たちのボルテージを最高到達点にまで連れていってくれる。そんな曲。ラストサビに差し掛かる前の「♪君の知ってる僕は 会いたいよ」の“会いたいよ”の部分を、とても寂しそうに、それでも力強く歌い上げる姿が印象的だった。“こんなに寂しいから大丈夫だと思う”藤原という人は何で、こんなにいつも寂しさを感じていて、それを大丈夫だって言い切れるのだろう。どうしていいのか分からない感情をこんなにも愛することができる藤原がたまらなく好きだ。

 

 曲と曲の間で、観客席からはメンバーの名前を叫んだり、ときにはそれに対して笑いが起きたりする。僕はこの時間が、ライブでしか味わうことのできない雰囲気が凝縮された魔法の時間みたいですごく好きだ。また、メンバーの名前だけではなく、「ありがとうー!」と叫ぶ人もいる。僕はこの5文字の言葉を聞くたび、何度も泣きそうになっていた。というより、泣くのを我慢していたと言ったほうが良いかもしれない。ありがとうの5文字じゃ、とてもじゃないけれど足りないほど、彼らには感謝の気持ちを心から捧げたい。彼らの楽曲から、生きる勇気やありのままの姿で生きていいんだよってことを教えてもらったから。それは何にも代えがたい事実で、本当に助けてもらったから僕は胸を張って言える。拙い言葉だけれど、ありがとう。何回言っても足りない気がする。ありがとう。

 

 宝石になった日の演奏が終わると、藤くんが「声聞かせてもらっていいですか…?」と私たちに問いかける。こんな藤くんの言葉から紡がれた楽曲は14曲目「虹を待つ人」だった。感情の交錯で渋滞している頭の中に追い打ちをかけるように、虹を待つ人のイントロがテンションを累乗するように、身体全体を響かせる。歌詞に沿うように、まさに私たちの身体に音が飛び込んで走る。サビでは、藤くんの唄声に続いて「♪ウォーウォーウォーウォー!」と、力を振り絞って限りなくゼロに近い大声で歌う。この時ばかりは、幼い体で外をはしゃぎ回る少年みたいな心で、精一杯声を出していた自分がいた。会場全体が一体となって、一緒に叫ぶあの熱気と圧力に魅了されながらも、僕はその一瞬一瞬を見逃さずに、光り輝くPIXMOBを高らかに掲げて、声をあげる。ラストサビに差し掛かる前は、「♪どこまでも 歌えさいたま!」と優しく煽りかけ、その直後に大量のツアーテープが発射され、楽曲と演出に彩りを添えるように、僕の心と会場のボルテージを最骨頂にする。感謝の気持ちを、喉の奥がはち切れそうになるくらい、飛び交うメロディに乗せて大声で叫ぶ。こんな美しくて眩しい演出に、自然と拍手と笑みがこぼれた。

 

 虹を待つ人の演奏が終わると、15曲目「fire sign」が始まる。もうイントロで泣きそうになっていた。なぜならこの曲は、もうすぐライブが終わっちゃうことを仄めかすような気がしたからだ。楽しいけれどとても寂しい。そんな複雑な感情が入り混じりながら、それでも、拳だけは力いっぱい掲げて彼らに見せる。サビの「♪微かでも 見えなくても 命の火が揺れてる」の“命の”に該当する箇所は、藤くんはたまに裏声を使って歌っていた。そして、今ツアーで恒例となった、ヒロの合唱の仕切りが始まる。いつもより長い出っ張りを、ギターを弾きながら歩いていき、先端のマイクスタンドに立つ。「最初は女子から!」「次は男子!下パート歌って!」と、ちょうど私たちの合唱に揉み消されて、上手くマイクを伝っていないヒロの声が会場全体に響き渡る。頑張っているヒロに応えようと僕は必死で聞き耳を立てて、ヒロの紡いだ言葉を理解して、頭に落とし込み声に出す。「♪ナーナ ナナナナナナーナ」と、メンバーの演奏に負けないように、メンバーの気持ちに応えるように、精一杯声を紡ぐ。女子の上パートと男子の下パートがマッチして、会場全体で綺麗なハーモニーを生み出す。途中でメンバーのチャマと藤くんも出っ張りの先端にやってきて、一緒になって演奏する。マイクスタンドの前にはヒロに代わり藤くんが立つ。藤くんの力強い歌声が会場の隅々まで広がって響く。それは瞬く間に僕の心の隙間まで入り込んできて、自然と合唱する声も大きくなる。音と言葉だけで、こんなにも人は元気になれるし、生きる活力をもらえる。なんて素敵で幸せなことなんだろう。ずっとこの合唱を続けていたい、聴いていたい、なんて、叶うはずもない物思いにふけながら、fire signの演奏は幕を閉じた。

 

 「今日はどうもありがとう。」こんな言葉を藤くんが呟きながら、演奏された16曲目の曲は「リボン」。ああもう終わっちゃう。本当に寂しかった。けれど、そんなことを思う間もなく、曲は展開されていくから、僕は必死に悲しさと切なさに負けないように、PIXMOBと一緒に右腕を高く上げる。2番サビでは「♪意地や恥ずかしさに 負けないで心で 正面から受け入れるよ」と歌詞変えをする。4人で結んできたリボンが、きちんと形になって私たちの目の前に、ただただ存在していた、音を鳴らしていた。そんな当たり前のようで当たり前じゃない事実が、奇跡を目の当たりにしているかのような感情で、心が溢れ出しそうになっていた。僕は最後の一音まで身体で受け止めた。

 

 リボンの演奏が終わると、会場が明転し、メンバーは「ありがとう!」と言い放ち舞台裏へ。私たちは幸せな気持ちを抱えたまま、座席に腰をおろす。メンバーが舞台裏へ去ってゆくと、遠くの方からたまアリコールが聞こえてくる。私たちはそのコールにつられるように、「たまアリ!たまアリ!」と連呼する。すると舞台は明転し、メンバーがツアーTシャツに着替えた姿で舞台上にあがってくる。その時、チャマはいつものようにスマホ片手に、お客さんをカメラに収めようとぐるぐる回して花道を歩いてゆく。僕はチャマにスマホを向けられたら、子どものように無邪気にピースサインをする。長くも短いスマホの動画撮影が終わると、チャマは「アンコールどうもありがとうー!!」と叫ぶ。それから、ファイナル限定グッズの話、DVD/Blu-rayの話を繰り広げたのち、アンコール曲が演奏される。

 

 アンコール1曲目は「ガラスのブルース」。秀ちゃんの力強いドラムから始まったガラスのブルースは、どこか懐かしい気持ちと寂しい気持ちを漂わせながら展開されてゆく。2番Aメロでは「ガラスの目をしたさいたま叫べ!」と歌詞を変え、会場のボルテージをあげます。さらにいつものように2番終わりのヒロのギターソロ前では藤くんが「ギター!増川弘明!」と言い、ヒロのギターソロが終わると、私たちが次の歌詞を合唱する。そして、次の箇所でも藤くんが「♪これからツライ事がもしあったなら 皆は唄いだすっ↑」とキーを上げ、私たちは「♪ガラスの眼を持つ 猫を思い出して 空を見上げて ガラスのブルースを」と力を振り絞って叫ぶ。いつもは周りの人たちの声に圧倒されて、自分の出す声は聞こえないけれど、この時は少し自分の出す声が耳に聞こえた気がした。それくらい、大きな声を出していた。そして何より、お客さんと一つになれたような気がして本当にただ嬉しかった。

 

 アンコール2曲目は「流星群」。イントロが寂しさをさらに後押しする。本当にもう終わっちゃうのかぁと、心の中で悲しいため息をつきながら、楽曲に耳を澄ます。寂しさを胸に抱えたまま、僕の心を慰めるように、右腕のPIXMOBはいつまでも輝き続けていた。曲の最後には藤くんは「この曲が終わればサヨナラだ」と歌詞を付け足し、寂しい気持ちを音に乗せて私たちに精一杯伝えてくれた。嬉しかった、けどとても寂しくなった。それはツアーの終わりを知ってしまったから。僕は優しくて温かい拍手を彼らに送った。伝えきれないくらいのありがとうを、拍手に込めて送った。

 

 鳴りやまない拍手の中、会場は明転し、メンバーはタオルやリストバンド、ツイストバンドをアリーナ席に向けて投げる。チャマは服を脱いで上半身裸になる。いつ見てもチャマは腹筋が割れている。僕は正直メンバーの筋肉には興味がないけれど、チャマだけはいつも胸あたりをまじまじと見てしまう。本当に理想的な逆三角形が完成されていて美しい。チャマは「みんなありがとー!!」と言い放ち、舞台裏へと駆け出していく。秀ちゃんは満面の笑みでドラム席からバイバーイと大きく手を振る。ヒロは「最初はとても暑かったけれど今はとても寒い…………..季節なので、みんな風邪ひかないようにね!!」と、完全に句読点で句切る位置を間違え、誤解を招いてしまうような最後の一言で、会場に笑いを誘います。でもそんなヒロがヒロらしくてとてもかわいかった。腕をかきかきしながらも、最後はぴょんぴょんしながら「ありがとー!!」と、私たちのハートをがっちり掴んでステージ裏へ向かいます。そのときヒロは、まさかの着ていたTシャツを脱ぎ、上半身裸に。僕はあまりの突然の出来事に一瞬何が起きているのか理解することが出来ませんでしたが、ヒロの胸の筋肉はばっちりこの瞼の裏に焼き付けておいたので、今でも鮮明に思い出すことができます。チャマと同じくらい筋肉がついていたので、良い意味でびっくりしました。とてもズルくて、こんなのヒロを好きになる以外道はありません。会場内はキャーというような、悲鳴に近いときめきが声に漏れ、女子のハートが見事に射貫かれていました。そして最後に藤くんがMCをします。

 

 10秒近く深々と丁寧にお辞儀をして、マイクスタンドに立ちます。「今日は本当にどうもありがとう。さっきも言ったんだけど、本当に何周年とか全く気にしてなくて、20年前はチャリ漕いでメンバーの家に行って、バンドの練習をして、そこから曲が少しずつ出来てきて、始めは自分たちだけで音楽をやっていたけれど、次第にこうして僕たちの音楽を聞いてくれる人たちが出てきて、みんなと一緒になって歌う曲とかもできたりして、本当に10年、20年前とかは想像もしてなくて、こうして今君たちに音楽を聞いてもらえてとても嬉しいです。いつも僕は最後のMCで感極まっちゃって、上手くまとまんないんだけど、心から思いました。バンド組んで本当に良かった。」こんな心から漏れた言葉たちが私たちに優しく降りかかります。藤原という人は何でこんなにも、素直な言葉をさらっと言えてしまうんだろう。僕は丁寧に紡ぐ藤くんの言葉をひとつひとつ零さないように抱きしめ、拍手を送ります。

 

 そして、MCが終わった途端、藤くんは急に「ちょっとだけ時間大丈夫?あ、時間ヤバいって人は全然大丈夫だよ!」と言い、舞台裏にいるメンバーの元へ行きます。この時の会場の、驚きと期待と抑えられない衝動が入り混じり、自然とざわめきが起こります。ちなみにこの時の僕の頭のIQはおそらく2くらいだったと思います。“ヤバい”の3文字しか頭の中になかったです。少ししたら藤くんが再びステージに戻ってきて、なんとギターを掲げ始めます。「さっきメンバーに確認してきて、今からメンバーにも聞かせていない曲をやりたいと思います。上手く歌えるかなぁ…。」と、まだ全然心の整理がついていない私たちに追い打ちをかけるかのように、藤くんが一人で新曲を歌い始めます。本当に人が唖然とするときって、記憶という概念がなくなります。メロディと歌詞は何となく覚えているけれど、本当に曖昧だ。ただ唯一断言できることは、最後の歌詞は「行ってきます」だったということ。あれだけ迷子だったのに、何か目的地が定まったような、また新しい一歩を踏み出しているような、期待感と新鮮味あふれる楽曲だったような、そんなことをあの時思った。ツアーの最初は「全国行ってきます」って言い放って、ツアーファイナルでも「行ってきます」と締めくくった。本当に彼らに迷いはないように感じた。でもいつでも彼らからは、迷子のままでも大丈夫よって言って、側に寄り添って支えてくれる気がする。これからもずっと。

 

 「温かくして寝てね!おやすみ!バイバイ!」最後の藤くんの“バイバイ”がとても寂しそうだった。僕もバイバイって手を大きく振った。ありがとう。そしてPATHFINDERツアーお疲れさまでした。

 

 会場を出て、“SAITAMA SUPER ARENA”の文字を見ると、なぜか急にとても寂しくなった。そして何より寒かった。私たちはフォトブースで写真を撮ってもらい、さいたまスーパーアリーナを後にした。次ここに来るのはいつになるんだろう。なんて、そんなことをふと思いながら、駅までの帰り道、何度も後ろを振り返りながら、帰路につく。あれから2週間経った今でも、ライブのことを鮮明に思い出すことができる。それはたぶん、心が揺さぶられて、感情が何度も動かされたから。そして何より大切な人とライブを見ることができたからだと思う。BUMPさんは、ゆっくり休んでもらって、またライブしてほしいなぁ。こんなにも素敵なライブを実現していただいたスタッフの方々に感謝いたします。本当に大好き。

 

 

ではでは!☆☆☆☆

 

          参考:LiveFans | ライブ・セットリスト情報サービス【 LiveFans (ライブファンズ) 】

「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」 1/11 日本ガイシホール ライブレポート

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 あれは5年ほど前のできごと。WILLPOLISツアーで、初めてBUMPのライブに参戦したのが日本ガイシホールだった。しかもライブというイベント自体が人生で初めてで、どことなく幼かった自分にとっては、すごく楽しみで緊張していたのを今でも鮮明に覚えている。その当時、置かれていた状況や心境までもが、昨日のことのように思い出せる。それくらい自分のなかでは、大きくて大切な体験だった。今では当たり前のようにライブに行くことができて、当たり前のようにTwitterで繋がっているたくさんのフォロワーさんたちとお会いすることができて、5年前の自分から見れば、本当に信じられないと思うし、本当にありがたいなぁって心の底から思う。だから、この場所に来ると当時を思い出して、すごく懐かしく感じるし、少し寂しくも感じる。この感情は、実家に帰ったときのような温かさや久しさに似ている気がする。もし僕がアナザースカイに出演するときは、ガイシホールの前に立ち、カメラ目線で「ここが僕のアナザースカイ」と言っていると思います。とても感慨深い場所です。

 

 場所はアリーナでしかもA3。ステージの最前列である。人生で初めての最前列だった。正直僕みたいな人間が最前列で良いのだろうか。ここに居るべき人はもっと他にいるんじゃないだろうかって思ったりして、とても複雑な気持ちになった。こればかりは“運”と、自分に言い聞かせるけれど、でもやっぱり自分の居場所じゃないような気がした。最前列で見る権利なんて自分には無いと思った。こんなこと言っても話は前に進まないから、僕は僕の居場所で、ブロックで精一杯心から楽しもうって思った。これが、咲いた場所で輝くことなのかなって思った。

 

 今回のパスファインダーツアーでは日本ガイシホール公演は、ありがたいことに4公演目で、前回参戦した石川公演から1カ月も経たないうちにライブだったので、本当にあっという間に公演日がやってきた感覚だった。正直まだ正月気分が残っていたと思う。

 

 笠寺駅を降りガイシホールに向かう途中、足を進めるのと比例して、あの頃の懐かしさが刹那的に込み上げてくる。目の前の景色、音漏れ、グッズ売り場、すべてがすべて同じで、あの頃にタイムリープしたかのような感覚におちいった。あれから5年もの月日が流れたとは思えないくらい、僕の心は純粋で感じることは何も変わっていなかった。変わらない自分に対して、寂しい気持ちが少し心の奥で騒めいていたけれど、素直さや純心さは変わらないかたちで残っていたのを再確認できたからホッと安心できた気がした。

 

 寒空のなか、2時間くらいガイシホールを彷徨い、あっという間に開場時間になった。アリーナの入り口待機列に並び、抑えきれない鼓動の高まりと寒気から来る武者震いに感情を揺さぶられながら、ただひたすらかけがえのないワクワクする時間を待つ。入場はAブロックの人たちからだった。だから後ろの方のブロックの方は、この寒さのなか、長い時間待ちながら、入場できたとしてもステージからは遠いブロックという、少しかわいそうな待遇だなぁと思った。私たちAブロックの入場は最後でも良いから、せめて一番後ろのブロックの人たちから入れてあげてって心から思った。そんな葛藤をしながら申し訳ない気持ちを抱えながら、並び始めて10分くらいでガイシホールに入れさせてもらった。

 

 ガイシホールのなかに入ると、やはり記憶が瞬時に呼び起こされた。こんなにも頭の片隅の遠くの場所にある記憶なのに、実際にこの場所に来ると、こんなにも瞬間的に記憶が想起されることに驚きしか感じなかった。当たり前だけど、あの時この場所でBUMPのライブを見たことは嘘じゃなかったんだ、夢じゃなかったんだって、本気で感じた瞬間だった。スタッフさんに案内していただいて、ブロックへ向かう。A3ブロック。やばい。めちゃくちゃ近い。マイクスタンドが目と鼻の先だ。そして左に首を90度傾ければ、そこには花道がある。近い、近すぎた。物理的な距離はとても近かったけれど、この近さを受け入れられないもう一人の僕との距離はとても遠かった。とても近いけれどとても遠かった。そして暑い。僕は知り合いの方と一緒に参戦していたため、開演前のアナウンスも聞こえないくらい、ライブ前のテンションに身を任せてずっとひたすら喋っていた。人と話していると時間なんて忘れてしまう。会場入りしたときは、有り余ってるスマホの時間を眺めては、早く始まらないかなって思っていたのに、気が付いたら開演の1830分を過ぎていた。ずっと話をしていたので、もうすぐライブが始まる感じを全く感じられないまま、会場は暗転し、大きくて暖かい拍手とともに遂にライブがスタートする。

 

 ステージが暗くなると、4次元空間にいるかのような無機質な映像がステージの背景に流れだす。どこか分からない場所を探しさまよってるような、まるで人生を投影しているような、そんな映像。ここではないどこか、つまり、憧れや夢みたいなものを、表しているのかなって思ったりもした。そして映像が終盤に差し掛かると、ヒデちゃん、ヒロ、チャマ、藤くんの順でステージ上に姿を現す。そして藤くんは高くギターを掲げる。変わらない格好良さ。1曲目が始まる前にツアーテープが発射され、同時にパスファインダーのテーマが演奏される。冷静さを欠いたまま、右手に灯るPIXMOBを掲げて、彼らの演奏に耳を傾ける。これだけで、もう辛いことや悲しいことも全部忘れられるような気がする。また前を向いていこうって思わせてくれる。ライブが始まるまえから、もうすでに感情の整理が追いつかなかった。

 

 パスファインダーのテーマが終わると、ステージ背景に大きく「PATHFINDER」の文字が映し出される。この文字を目にすると僕はライブに来たんだって強く思い知らされる。そして本編がスタートする。

 

 1曲目は「GO」。キラキラしたイントロとともに大量の紙吹雪が目の前を埋め尽くす。最前ブロックということもあって、近すぎるメンバーと色とりどりの紙吹雪があいまって、まるで夢を見ているかのような幻想に浸っているみたいだった。GOを聞くと何故かすごく安心する。興奮しているけれど、心はとても穏やかな気持ちになる。2番のAメロ「♪なんとなくボクも走りたい チケットも持っていないのに」のチケットの部分を1オクターブくらいキーを上げて歌っていた。また同じく2Aメロでは「♪だけど走った地球の上」を「♪だから君に会いに来たんだ」と歌詞を変えて歌っていました。合っているかは曖昧で申し訳ないですが、会いに来たという言葉はきちんと聞こえたので、全部ちゃんと聴こえなくても心の耳できちんと全部聴いていたので大丈夫です。2番終わりの間奏部分では藤くんが「名古屋ーーー!!!!お前に会いに来たんだよ!!!!!!」と力強く叫んでいました。もう嬉しくて嬉しくて、泣きそうでした。いや、心のなかでは大号泣だった。もし、今回のツアーはどうしてもいけなくて、1公演だけ行くことが出来るって人もいるわけで、もし僕が当事者だったら、自然と目から涙が零れ落ちていると思います。心の底から飛び出したほんとうの言葉は、こんなにも簡単に人の感情にするりと入り込んできて、抱えている不安や悩み全部洗い流してくれて、生きる希望や勇気に変えてくれる。もう既にありがとうって、足りないくらい言いたい。

 

 2曲目は「天体観測」。突然藤くんが「♪明日が僕らを呼んだって 返事もろくにしなかった 「イマ」というほうき星 君と二人追いかけていた」と歌い上げ、私たちは「オーイエーアハン」と応える。そして、ライブVer.の始まりで天体観測の演奏が始まる。ライブの定番曲となっても、飽きることなく、紡がれる歌詞の一つひとつを噛み締めて、聴いていられる。本当に大好きな曲である。ラストサビでは「♪「イマ」というほうき星っ!」と歌い上げ、私たちは「♪今も一人追いかけている」と一斉に歌う。PIXMOBが私たちの声に反応するように光り輝く。天体観測のラストは、フェードアウトしていくことなく、ヒデちゃんが立ち上がり、ドラムに見を任せて叩く。リズム隊のみんなもそれぞれの楽器を掻き鳴らす。圧巻で凄まじい。身体中に最大公倍数的に飛び込んでくる音をすべて受け止め、ライブの空間を、ここでしか味わえない感情とともに精一杯音楽と戯れた。

 

 3曲目は「ray」。イントロのチャマのベースが良い味を出す。メンバーは颯爽と出島の先端にやってきて演奏を始める。目と鼻の先にメンバーがいる。これだけでもう胸がいっぱいだった。メンバーの口の動きや弾いている指の先まで鮮明に見ることができる。遠い存在でしかなかった彼らが今は目の前にいる、存在している。演奏している。これは夢なのかもしれないって何度も思った。最前ブロックってすごい。おそらく手をワイパーしている時は、語彙力が無くなっていて、IQ15くらいだったことだろうと思う。ラストサビ「♪確かめる間もないほどっ!」と歌って、私たちが「♪生きるのは最高だ」と応えて歌う。このパターンは初めてだったので驚いた。おそらくこれから天体観測のラストサビと同じように、rayもライブではこんな風に、お客さんに合唱してもらうのかなって思いました。生きるのは最高だって合唱できるって良いですよね。いつもあなたたちの音楽に最高にさせてもらってます。ありがとう。

 

 rayが終わるとここでチャマのMCが始まる。「ツアーパスファインダーへようこそ!」いつものテンションでチャマのMCが始まると突然、「なごやなーごや」と、今ツアーで定番化しつつある、会場名をお客さんと一体となって叫ぶコーナーが始まる。しかしチャマのなごやコールが少し間違っていたらしく、藤くんが「ちょっと待って、さっき楽屋でやってたのと違うじゃん!」と珍しくツッコミを入れていたので、一見笑いを誘っているようなこの会場名を叫ぶコールは、きちんとメンバーによる綿密な打ち合わせがあったことがここで初めて証明されました。その後は、アリーナとスタンドで別々になごやコールが始まった。こんなに大人数で「名古屋」と叫ぶことはもう二度とないかも知れないと寂しい思いを浮かべながら、チャマのコールに必死に応えた。楽しかった。なーごや~良い場所です本当に。心温まる楽しいチャマのMCが終わると会場が暗転し4曲目へ。

 

 4曲目は「宇宙飛行士への手紙」。僕は今ツアーで初めて聴く曲です。とても聴きたかった曲のひとつなので、演奏が始まった瞬間、心のなかのテンションが既にクライマックス状態でした。1番サビでは「♪それが未来の今日のうちに ちゃんと取り戻しておきたいから」と歌詞変えをしていました。また2番のトリケラトプスの箇所では、藤くんが頭の上で両手の人差し指を立て、フジケラトプスをやっていて不覚にもキュンとしてしまいました。生で、しかもこんなに間近でフジケラトプスを見れたのは初めてでした。そして2番終わりのヒロのギターソロは、ヒロが出島の先端に出てきて、ライブアレンジをして、華麗なギター捌きを披露していました。普段のヒロとは違ったギャップのある一面が見れて、僕はもう増川さんに惚れていました。そしてラストサビでは、「♪笑い合った今日がずっと 未来まで守ってくれるから」と、過去今日と歌詞変えをしていました。こんなに幸せでいられる日がずっと続けばいいなって心から思った瞬間でした。

 

 5曲目は「Ever lasting lie」。イントロを聴いた瞬間、どこからか安堵感を感じられるエバラス。2番終わりの藤くんのギターソロが見所です。とても安定した演奏で、聴いているこっちも心奪われながら、聴き入ることができました。

 

 6曲目は「記念撮影」。藤くん、チャマ、ヒロが出島の先端へやってきて、演奏を始めます。秀ちゃんのドラムに合わせて腕に装着しているPIXMOBが点灯します。アリーナ席から見渡すスタンド席、そこから放たれる光の一つひとつが蛍の儚い灯火みたいに、光り輝きます。藤くんの唄声とリズム隊の演奏とがあいまって、限りなく神秘的で幻想的な風景だった。今でもずっと瞼の裏に焼き付いている。忘れたくないなあ。

 

 記念撮影が終わると、メンバーは優雅な姿を保ちながらステージへと戻ってゆく。すると再びチャマのMCが始まる。次はメンバーの自己紹介である。「真ん中がフジ、右手がヒロ、左手の金髪がチャマ、後ろがヒデ。」と急いでいるかのように饒舌にメンバー紹介が繰り広げられる。そして観客に投げかける。「真ん中は?」「フジー!」「右は?」「ヒロー!」「金髪は?」「チャマー!」「後ろは?」「ヒデちゃんー!」「ヒデでしょっー!」とツッコミ混じりのチャマトークで会場内に笑いを誘う。そんなテンションに身を任せたチャマのMCを引き継いだままライブは7曲目へ。

 

 7曲目は「pinkie」。HAPPYカップリング曲で今ツアーの固定セトリになっている楽曲である。歌い出しは藤くんがハンドマイクで、ヒロをガン見しながら歌い出す。一瞬遠近法でガン見しているように見えているだけなのか?と、僕の目を疑いましたが、おそらく藤くんはヒロの方に体を向けて歌っていたと思います。38歳のおじさんが38歳のおじさんをガン見しながら歌っている姿に惚れ惚れとしてしまう僕は一体何なんだろうと、ふと我に戻る暇もなく、僕は楽曲に丁寧に耳を傾けていました。ツアー初日の不慣れな様子を見せながらハンドマイクで歌う藤くんも、今では慣れた手つきでハンドマイクを使いこなしていたので、なんかもう優しく頭ポンポンとしてあげたい気分でした。

 

 pinkieが終わると、ギターをアコギに変え、小さな声で「な~ごや~~」と囁く。次に少し大きな声で「な~ごや~~」と言う。そして「なごやイントロク~イズ」と少し、はにかんだ笑顔でお客さんに問いかける。そして、とある楽曲のイントロの1小節をおもむろに弾き語る。「分かった?」と言い、8曲目「スノースマイル」が披露される。スノースマイルは今ツアーで演奏するのは徳島以来の2回目である。こちらもいつか聴いてみたい楽曲だったので、すごく嬉しかった。演出も拘っており、背景には雪と雪の結晶が降り注いでいたので、クリスマスを彷彿とさせられた。僕は、揚々と歌い上げる藤くんに虜になって、拳をあげるのも忘れるくらい聴き入っていた。曲終わりのフェードアウトしていく箇所の「♪ラララ~ラララ~ラララ」は、CD音源よりも長く、余韻を残して力強く歌っていたのが印象的だった。いつまでも聴いていたかった。終わってしまうのが寂しく感じた。けれど、とても良かった。

 

 スノースマイルが終わると、4人は出島へ向かう。咄嗟に90度左に体を向けるとドラムセットが出島から現れる。そしてそこに座る秀ちゃん。その距離約5メートル。そう、つまり秀ちゃんをほぼ真横から見ている状態である。僕はもう二度と、秀ちゃんをこんなに近くで、しかもこの角度から見ることは無いかも知れないと思い、目がよじれるほど強く瞼の裏に焼き付けておこうと思った。

 

 出島から演奏された9曲目は「三ツ星カルテット」。正直僕は、ドラムを叩く秀ちゃんしか見ていなかった。たまに他のメンバーに目をちらつかせる程度で、基本は秀ちゃんから目を離さないでいた。秀ちゃんからしてみれば、おそらく怖かったであろう。だってあんなに近くから何百人もの人たちが彼を見ているのだから。でも、ドラムを叩く秀ちゃんの姿は、どこか勇ましく男らしく、そして少し可愛さがあった。また、チャマはずっと秀ちゃんの方を向いて、一音一音丁寧にリズムを取っている。チャマはそれを証明するかのように、きちんと口を動かしているのが肉眼で確認できた。僕はこの3分で完全に秀ちゃんとチャマに惚れてしまった。もしかしたら、これが本当のなのかも知れない。

 

 三ツ星カルテットが終わると、MCタイムである。チャマが藤くんにライブについて尋ねる。すると藤くんは心のこもった声で「楽しく演奏させてもらってます、どうもありがとう!」と言う。自然と沸き起こる拍手。なんて温かいんだろう。藤くんに「どうもありがとう。」って言われると心がホッコリする。それは熱さの概念がない温かさ。情があって美しい。自然が巻き起こす現象、オーロラのような、雪のような、雷雨のような、そんな類のもの。そして次にヒロにMCをバトンタッチする。「ライブどうですか?」というチャマの問いに対してヒロは、「天井が高いから、遠くまでよく見えてます!...逆光でよく見えないけれど...。」と矛盾したような回答を、微笑みを浮かべながら言い、観客に笑いを誘う。そして再び藤くんが話します。「去年にも名古屋に来て、ライブをやらせていただいたんですけど、キャパはここより少なくて、何千人だったかな。でもここは何万人の人がいて、でも人数が増えたからといって、僕たちは一人ひとりに届くように、一対一が何万通りあるように、あなたに届くように心を込めて歌っています。」という、凄く記憶が曖昧ですが、このようなMCをしていました。本当にメンバーは、リスナー一人ひとりに寄り添って、歌を届けてくれているんだなあと実感した瞬間でした。ありがとう。ちゃんと届いています。

 

 「もう一曲、ここの出っ張りでやっていいですか?」という藤くんの言葉とともに10曲目「You were here」が演奏されます。しかし、チャマの初めのベースを弾き始めた途端、藤くんが「ちょっと待って!あ、止めなくていい、止めなくていい!」と笑みを浮かべながらも、他のメンバーもビックリした様子で曲を中断し、僕も急にどうした藤原!?となり、周りの人たちも一瞬混乱を招いた様子でした。すると藤くんは「次の曲、拾った紙吹雪~っていうのがあって...」と言い出したので、僕はかわいいかよ!って思いながら、これは曲を止めて正解だったのではと心のなかで確信しました。僕は、おそらく、拾った紙吹雪という歌詞の部分で実際に足元の紙吹雪を拾って見せたかったのかな?と推測しましたが、完全にマイクから離れることになるので、結果僕は藤くんの思考にはたどり着くことが出来ませんでした。でも、お茶目でかわいい藤くんが見れたので、僕はもう満足です。ちなみにこの曲でも9割くらい目線は秀ちゃんでした。チャマも秀ちゃんの方をずっと向いて、丁寧にリズムを合わせていたので、普段のちょっとふざけたMCとは違う一面のチャマが、こんなにも近い距離で見ることが出来たので、すべてが夢みたいで愛おしかったです。アウトロの最後は、藤くんとヒロが向かい合って、ギターを弾き、演奏が終わると、お互いにグータッチを交わし合っていました。こういう姿を見ると、本当に愛おしく感じます。こうしてあっという間に魔法の時間は終わりを迎えます。出島での演奏が終わるとメンバーは再びステージへ。

 

 11曲目は「アンサー」。明るいサウンドから始まるこの楽曲。ライブ向きの楽曲と言うと少し語弊があるかもしれないけれど、とてもきれいなメロディラインで、大きく背中を押してもらえる。まだまだこの曲を深くは理解できていないけれど、それでもどこか生きる勇気をもらえたり、今の自分のままで大丈夫だよって、言ってくれている気がする。元気になれる。大好きな一曲。

 

 12曲目は「ラフ・メイカ」。メジャーデビュー曲ダイヤモンドのカップリング曲である。あの頃の尖ったバンプを彷彿とさせる、力強いサウンドで、胸ぐらをグッと掴まれたような、そんな雰囲気をこの曲から感じた。僕がバンプを知ったのは約9年前だけれど結成当初から聴いている人は、なにか心の中で思うことがあったに違いない。こうして昔の曲から最新曲まで、まんべんなく演奏してくれるのは、とても嬉しい。ありがとう。

 

 感情が追いつかないまま展開されていく曲たちに、打ちひしがれそうになりながらも、演奏された13曲目は「宝石になった日」。アルバムButterfliesに収録されている曲です。個人的にアルバムのなかでも大好きな曲です。ラストサビに入る前の「君の知っている僕は 会いたいよ」の会いたいよの部分を1音くらいキーを上げて歌っていたのが印象的でした。お別れをするのが寂しいから、その寂しさや悲しさを肯定的な言葉に託して、歌詞の中になる会いたいの部分を力強く歌い上げたのかなと思いました。僕もまた会いたいなあ。

 

 そして14曲目は「Butterfly」。イントロを聴いた瞬間にテンションが急上昇します。歌詞はこんなに切ないのに、バリバリのEDMが効いた楽曲です。僕の二の腕が限界をむかえそうになった途端にButterflyが演奏されたので、限界なんて概念なんてその瞬間に無くなり、腕に光るPIXMOBが僕のエネルギーと化すかのように、無意識にジャンプして飛んだり踊ったりしていました。すごくすごく楽しかった。ラストサビでは、ツアーテープも発射され、子どもみたいに無邪気で純粋な心で、必死になってテープを掴もうとしてました。虹色に光り輝くPIXMOBがそれぞれの個性や生き方を表しているようで、目の前のかけがえのない景色のなかには、楽しさだけじゃない、ドラマがあったような気がしました。そういうものをあの時、感じとった気がした。本当に楽しかった。心から子どもになれた。こういう体験は、ずっとずっと大切にしたいなあ。ありがとう。

 

 ヒロとチャマは出島で演奏していたため、ステージに戻ってきます。するとチャマは、いつのまにかツアーテープまみれに。それを見て藤くんは「何か色々拾ってきたね~。」と、おばあちゃんのような優しい口調でチャマに問いかける。するとチャマは、藤くんのマイクスタンドに金テープを掛ける。藤くんは「あら、分けてくれるのね。なんかしゃちほこみたいだね。」と優しさ混じりちょっとした小ボケ混じりのかわいいおじちゃんになってました。もう、なんか、かわいい。すべてが、かわいい。僕はもう彼らに恋しているのかも知れない。

 

 そんなかわいい劇場が終わると藤くんが「声聞かせて下さい!」と言い、すぐに15曲目「fire sign」が演奏される。fire signのイントロを聴くとなぜか、ふいに泣きそうになる。これは僕が元々この楽曲が大好きで、聴いているとどこか切なくなる個人的な理由もあるのだろうけれど、やはりもうちょっとでライブが終わっちゃうから、という理由が一番強い気がする。とてもとても寂しくなる。今この文章を書いていても、やっぱりライブを思い出して泣きそうになっている。本当にこの曲が大好きだ。そして、そんな寂しさを良い意味でかき消すかのように、恒例となっている後半の合唱部分のヒロのコーラス分けが始まる。「は...始めは右側の人から!つ...次は左側...左の人ね...。」文章ではとても伝わりにくいが、グダグダなのである。でもそんなヒロがヒロらしくて大好きだ。途中で「がんばれー!」という掛け声も聞こえてきた。僕も心の中で「ヒロ頑張れっ!」って精一杯応援していた。グダグダなヒロのコーラス分け。微笑みながら戸惑う観客。これの繰り返しである。始めに右側の人と左側の人とでコーラス分け。次にチャマにお手伝いしてもらい、高い方と低い方とでコーラス分け。最後に好きな方で歌うコーラス分けの計3種類をヒロが仕切りきった。グダグダでも精一杯声を出して、私たちに届くように頑張っていた姿が僕には輝いて見えた。そんなヒロの姿を見ていたら不思議と恋心が芽生え始めてきたような気さえする。仮に僕が女性ならもう完全にノックアウトされていたことだろう。良い意味で増川さんはずるい。あの可愛さはヒロしか出せない気がする。まとめるとヒロ大好きだよってことです。ヒロのコーラス分けが終わると、藤くんも出島の方にやってきて、一緒に合唱をする。藤くんが出島にやってきたとき、ヒロは少し緊張が和らいだのか、リラックスしたような表情を浮かべていた気がする。かわいい。僕は全精力で声を出し、疲れ切った体に飛び込んできたのは、曲が終わりステージに戻る途中、藤くんがヒロの肩に手を伸ばし、慰めるようにポンポンと柔らかく肩を叩いている姿だった。藤くんの優しさが相まみえた瞬間だった。そんな一瞬の出来事を見ただけで、今まで辛いことも悲しいことも、あんな風にして、お互いがお互いに支え合って、ここまでやってきたんだなあって感じとれた。素敵だなあって心で思った。

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎていき、気付けば最後の曲に。16曲目は「リボン」。「今日はどうもありがとう。」藤くんの寂しそうなマイク越しの声に乗せて嵐の中へ。とても寂しかった。悲しかった。もうライブが終わってしまうという現実がただただ寂しくて切なかった。本当にあっという間だった。2番サビでは「意地や恥ずかしさに 負けないで 心で 正面から 受け入れるよ」と歌詞変えをしていました。全力で受け入れてもらいました。今までのライブ以上に、って書くと語弊を招くかも知れないけれど、本当に早く瞬く間にライブが終わってしまったような感覚がある。心から楽しんでいるときって、時間を忘れてしまう。本当にその通りだと思った。最後の一音まで丁寧に耳で受け止めて、ライブは終わりを迎えました。ありがとうの思いを彼らに伝えるように、伝わるうに精一杯手を振る。彼らは颯爽と舞台裏へ。そして会場は暗転する。

 

 すると、周りからアンコールのコールがざわめく。しかしコールはバラバラで「なごや~」と言う人、「supernovaのランラーララーラー」と言う人、「fire signラーラーララララララー」と言う人、それぞれがそれぞれのアンコールを歌う。大多数はチャマのなごやコールだったが、コールが早く難しいため、中々揃わない。しかし、メンバーには届いたのか、すぐにステージが明転し、メンバーがツアーTシャツに変身してステージ上に現れる。チャマはいつものように、iPhoneを片手にお客さんを映す。僕はチャマのインスタに何とかして映ろうと、家ではしゃぐ子どものように、無邪気なからだで精一杯ジャンプして手を振る。「アンコールありがとうー!」とチャマが叫ぶ。そして、みんなで写真撮影に。藤くんが肉声でカメラマンの古溪さんを紹介し、僕は本当にいつもありがとうございますと、心のなかで感謝しながら、からだ全体で大きくピースサインをする。写真撮影が終わると、チャマのMCが始まる。そう、物販の話である。チャマ曰く、ツアーは冬なのにTシャツをこんなに作って売れるんですか?とスタッフさんから言われたそう。しかし、チャマは一つも外すことは出来なかったらしく、チャマの案をすべて受け入れて販売することにしたそう。そしてチャマは言う。「冬が来たら何が来るの?」こう問いかける。私たちは咄嗟に「春ー!」と応える。すると「春が来たら次は何が来るの?」「夏ー!」間違いない事実だ。ここは日本で、ちゃんと四季がある。「夏になると着れるでしょ!」と少し強引な気持ちで買ってほしいことをお客さんに伝え、最後には「お願いします!」と言っていた。僕はチャマの言葉に思いに貢献したかった。けれど経済的な理由であまり貢献出来なかった。チャマごめんね。でもちゃんとグッズはいつも通り金銭感覚を失うかのように買ったから許してね。そんなことを思いながら、アンコールが始まる。チャマは「来い!楽器来い!」とフォースの力で楽器を呼び寄せていましたが、結局自分でベースを取りに行くという、一人ノリツッコミをして会場に笑いを誘っていました。

 

 そしてアンコール1曲目「ダイヤモンド」が演奏される。しかし、藤くんがAメロの途中で「ちょっと待って!チャマ電源が入ってない!」と言って珍しく演奏を止めていました。チャマは「フォースの力が足りなかった!ホントごめん!」と謝り、再び演奏が始めから再開される。この場面を見て僕は、当たり前かも知れないけらど、彼らはちゃんと音楽を心を込めて私たちに届けようとしているんだなあって思いました。きちんと音を大切にしているから、私たちに届けたい思いがあるから、藤くんは途中で演奏を止めたのかなって思いました。おそらく藤くんは、ほとんど無意識で演奏を止めたと思う。じゃないとあの早さでベースが鳴ってないことに気づかないような気がする。音楽を大切にしている彼らだからこそ、突然のハプニングにも臨機応変に対応できるんだと思った。演奏が始まる前から、もうすでに僕の心はいっぱいいっぱいだった。何回転んだっていい。一つだけ大切なものを、抱き抱えてあげればいい。そんなことを改めて教えてもらった。ありがとう。

 

 ダイヤモンドが終わると「もう1曲やってもいいかい?」と藤くんが言う。温かい拍手とともにアンコール2曲目が始まる。アンコール2曲目は「流星群」。イントロが切なすぎる。もう本当に本当に終わりなのかあって、そんな寂しさを抱えたまま、僕は光っている腕の光をメンバーに見せるように、やさしく左右に手を振る。ラストは歌詞を加えて、「♪この曲が終わればさよならだ ようやく出会えたよにさようならだ 君と歌えた 出会えた 出会えた」とても曖昧だけれど、こんな風に付け足していた。彼らも僕と同じように、もしくは僕ら以上に寂しい気持ちを抱えているんだなぁって思った瞬間だった。そして、ライブは幕を閉じた。

 

 メンバーは楽器を置き、お客さんに向かってリストバンドやツイストバンド、タオルやペットボトルを投げる。特に藤くんが投げたツイストバンドは、僕の2メートルくらい先にいた人が、凄まじい反射神経でスパッとキャッチしていたので、おめでとう!という感想よりも、反射神経抜群やん!と、なぜか驚きの感情の方が勝っていました。取った方はホントにとても良い顔をしていて、こっちまで幸せをおすそ分けさせてもらった気分でした。最後に藤くんがMCをする。「今日は本当にどうもありがとう。音楽はいとも容易く物理的な距離を飛び越えてしまいます。聞いてくれるあなたたちがいて、始めて曲が完成します。僕たちはずっと音楽を続けていくので、また新しい曲が出来たら、抱きしめてあげてやってください。今日は温かくして寝てね。バイバイ。おやすみ。」とても要約したけれど、こんな言葉を残して藤くんは舞台裏へ去っていきました。

 

 「音楽はいとも容易く物理的な距離を飛び越える。」藤くんのMCで一番印象に残っているところです。こんな言葉がさらっと出でくる辺り、彼は本当に繊細で思慮深い作詞家なんだなぁと思いました。僕は何回彼らの音楽に勇気をもらったか分からないけれど、ずっとずっと彼らの音楽を抱きしめて、そしていつまでも応援していきたいと思った。ライブ中は、4人の仲の良さを見ることができたり、寂しいって言葉を言わなくても、どこからか寂しさが伝わってきたり、本当にかけがえのない体験をさせてもらったと思っています。あの空間にいられたこと。あの空間を作ってくれたたくさんの人、一人ひとりに感謝を申し上げたいです。2.3時間のライブをするために、どれだけたくさんの人たちが考えて、行動して、試行錯誤してを繰り返したのか、僕には想像がつかないけれど、それでも僕は、すべての人に心からありがとうを言うことができる。どうしてもこの5文字だけじゃ足りないけれど、僕は声を大にして言いたいです。このような素敵な演出と歌声を届けてくれて本当にありがとうございます。とてつもない元気と勇気をもらえたよ。そして、ツアーがあと1ヶ月もせずに終わってしまうという事実に、驚きと悲しみしかない。だけど、彼らにはゆっくり休んで欲しいという気持ちもあったりして、感情が紆余曲折しています。また音楽を届けてくれる日を楽しみに毎日を生きようと思います。側にいなくても、音楽はいつでも側にいるから、大丈夫だと思う。

 

 

 なごやぁぁぁああああああなたがぁぁはぁぁぁなぁぁああならぁぁぁああああああ!!!!!!!

 

 

 藤くんがテンション上がって披露したなごやコールの花の名Ver.です。声が心配でしたが、思いは強く伝わってきました。ありがとう。

 

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ではでは!★★★★

 

          参考:LiveFans | ライブ・セットリスト情報サービス【 LiveFans (ライブファンズ) 】

 

 

こころのかたち

 小学校の頃の思い出のかけらを摘む作業が大好きだ。夢を見ていた、見させてくれていたあの頃に思いを馳せるのは楽しい。もっと過去の自分を好きでいたい。何もかもに素直だったあの頃のまま、今に至れたらなって、時々思う。忘れてしまったこと、失ってしまったことがとても悲しくて寂しい。私たちは、望んでいなかったたくさんの人たちの人生の中を、何度も会釈しながら自分の人生を歩んでいる気がする。僕もそのうちの一人。だけど、誰一人として、目の前の風景を望んでいなかった景色だと思いたくないはず。間違ってなかった、正しかったって思っているはず。というか、とてもじゃないけれど、そう思わないと、この星を生きていけないような気がする。

 これまでいっぱい過去に思いを巡らせた。授業の中休みや昼休みにはグラウンドに出て鬼ごっこ。放課後は友達と一緒に笑いあった。出された宿題と日直と給食当番。マラソン大会と学校の七不思議。うわさがうわさを呼んで、学校中で騒ぎになったね。今じゃもう、頭の中の辞書にはそのような言葉たちは、微かに汚れて見えなくなっている。

 

 そして自我が芽生え始めてから気が付いた、みんな一緒じゃないってこと。こころのかたちはみんな違うってこと。こんな当たり前のこと、今じゃもう当たり前って思えなくなった。みんな一緒じゃなきゃいけない。個性なんて認めない。そんな現実が嫌になった、逃げたくなった。人格否定と葛藤と死にたいのに死ねないもどかしさ。そんなものすべてが、自分が持っているこころのかたちを崩そうとしていた、壊そうとしていた。あの頃みたいな自分に戻りたいって、何度も願いながら、受け止めきれない現実に幾度となく泣かされそうになっていた。でも、「泣ける」って素晴らしい。それはおそらく、まだこころが残っているから。ずっと泣いてもいられないけれど、この感情は死ぬまで大切に持っておきたいな。悲しいとき、寂しいときにちゃんと泣けるように。

 好きだった。大好きだった。毎日が愛おしかった。刺激に満ち溢れながら、流れていく時間が眩しかった。もう二度と戻ってこないって思うだけで、悲しくなるし怖くなる。だから、僕はこうして過去に思いを馳せる。過去にタイムリープすると、こころに素直になれる。こころって一緒じゃないよ。みんな一人ひとり違うよ。だから面白い。だから笑い合える。かけがえのない過去と側にいて、もっとたくさんの人たちとこころのかたちを分かち合いたいな。

 

こころは一生変わらないで、変えたいな。むずかしいけどね。

でも、それだけで、なんか生きていける気がするよ。この先も、ずっと。

 

そう信じてる。

 

 

ではでは★★★★

2018年のはじまり

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 明けましておめでとうございます。2018年。平成30年。こうやって数字で、今生きている時代をあらわすと、近未来的な道の上を歩いているような、そんな感覚を覚える。当たり前が当たり前じゃないような、時間が過去のどこかで止まっているような、そんな感覚。止まってくれない時間の流れに、狂わされないように、惑わされないように、この先も生きていけるのかなって不安に思うけれど、同時に楽しみな感情も沸いてくる。いつまでもワクワクや好奇心を忘れないで生きていきたいと思う元旦でございます。

 

 大晦日は、思い返してみれば、毎年決まって同じ行為を繰り返している気がする。ガキの使いをメインで見て、CMに入るとNHKの紅白に番組を変える。そして数分見たら、またガキの使いに戻す。この繰り返しである。年越しはCDTVで迎え、朝まで見て、初日の出を見ようと頑張って眠さと闘いながら目を凝らすも、睡魔には勝てなくて、結局、日が昇る前に夢の中へいざなわれる。そして堕落した生活と美味しい食事を摂り、正月というハイパーダイナミックバケーションを思う存分楽しみ、正月ボケを引きずりながら、またいつもの日常に戻っていく。

 

 2017年は本当に色々あった。自分の人生について、考える時間がすごく多かった。分からない社会と、自分の感情に何回も葛藤しながら、毎日を紡いでいた。そんな中で、手を差し伸べてくれる人がたくさんいて、何度も助けられた。本当に感謝しています。ありがとう。自分の頭のなかにある気持ちや感情は、声に出さないと伝わらなくて、誰かに伝えることでやっと、気持ちを理解してもらえたり、共感してもらえたりする。これは、傍からみれば当たり前だけれど、こんな当たり前を実現させてくれた周りの人たちには、心から感謝している。当たり前という幸せ。一人じゃないってこと。言葉ってこんなにも支えになってくれるってこと。もっとある。本当にたくさんのことを気づかされた気がする。ありがとう。

 

2018年は、もっと心から笑っていたい。抽象的だけれど、それが一番だと思う。日常で出会う小さな幸せが少しずつ積もっていくと、それに比例して人生も少しずつ幸せになっていくような気がする。心も豊かになってゆく気がする。だから色んなことに感謝しながら生きていこうと思う。

 

 

みなさん良いお年を!

 

 

お肉とお寿司をいっぱい食べたいなぁ。

 

 

ではでは★★★★

「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」 12/16 石川産業展示館4号館 ライブレポート

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 当日は雨。豪雨と風が吹き荒れるなか、入場待機列で凍えそうな胸の奥を、ライブ前のドキドキで覆い隠しながら、ただただ自分のブロック番号が呼ばれるまで待っていた。番号が呼ばれたと同時に、この極寒の中から抜け出すかのごとく、颯爽と会場内へと足を運ぶ。傘は会場内には持ち込めないそうだ。僕は傘を端っこの分かりやすい場所に置き、ブロックへと駆け出した。ちなみにブロックはD-2。ブロックに入ると出島に薄らマイクスタンドが見える。この時点ではまだ距離感覚は掴めない。整列番号が遅かったため、会場に入った途端、すぐにいつものスタッフさんによる楽器の音出しが行われていた。この音を聴くとライブに来たんだなぁと改めて強く感じられる。会場内は人の熱気ですでに暑い。そして10分後くらいに「本日はBUMP OF CHICKENツアーPATHFINDER 2017,2018公演にお越しいただきありがとうございます。」といったアナウンスが流れる。「今しばらくお待ちください。」という締めのアナウンスとともに、僕は配布されたPIXMOBからテープを引き抜く。感情の整理がつかないまま、会場内を流れる洋楽がフェードアウトしていき、それとほぼ同時に、全体を包み込むように会場が暗転する。そして、興奮と熱気が無意識的に溢れ出るように、沸き起こる拍手。遂にライブが始まる。

 

 ステージにオープニング映像が映し出される。まるで4次元空間の中にいるかのような、ねじれ空間の中にいるかのような、不規則な波形がどこかを目指して彷徨うように展開されていく。その映像には、どこからか、人生に対する迷いや葛藤が投影されているような気がして、自然と魅入っていた自分がいた。映像が終わりに差し掛かると、秀ちゃんが初めに、藤くんが最後に登場する。藤原は大きくギターを掲げる。格好良い以外の何物でもない。秀ちゃん、チャマ、ヒロ、藤くん、それぞれがぞれぞれの楽器を鳴らす。僕は今回のPFツアーに参戦するのは、ありがたいことに石川公演が3ヶ所目なんですが、OP映像が終わる後に演奏されるインスト楽曲をどうか音源化もしくは映像化していただきたいです。そしてインスト楽曲が終わるとステージの画面には大きく“PATHFINDER”の文字が映し出される。もうすでに心がいっぱいである。その後本編1曲目が演奏される。

 

 1曲目は「GO」。イントロと共に、色とりどりの紙吹雪が舞い散り、幻想的で神秘的な風景が目の前を埋め尽くす。サビに差し掛かると、さらに紙吹雪が放出され、虹色に光り輝くPIXMOBと相まって、鮮やかで流麗な景色が辺り一面に広がる。2番サビ終わりには、「こんばんは、BUMP OF CHICKENです!石川!お前に会いに来たんだよ!!」とライブに参戦するお客さん一人一人の心に投げかけるように、強く優しく煽るように藤原が叫ぶ。僕は、手首の光り輝くPIXMOBをメンバーに見せるように、会いに来たことを精一杯彼らに伝えられるように、高く拳を掲げる。

 

 そしてそんな興奮に追い打ちをかけるかのように2曲目が演奏される。「♪「イマ」という ほうき星 君と二人追いかけてた」というサビのワンコーラスが力強く歌われたあと、ライブバージョンでの始まり方で2曲目の「天体観測」が始まる。ライブに参戦するたびに聴いている。けれど何回聴いても色褪せない名曲だと思う。そして、生でこの曲を聴くたび、あぁバンプのライブに来たんだなぁと感じられる。ライブならではのアレンジと、ラストサビ前の「♪「イマ」という ほうき星っ↑」と藤くんが歌い上げ、お客さんが「今も一人 追いかけている」と一体となり合唱する。ラストサビでは、「♪「イマ」というほうき星 僕らみんな追いかけている」と歌詞変えをして歌い上げる。金テープ・銀テープもラストサビで発射され、目の前の景色を彩るように舞い降りてくる。すべてが圧巻ですべてが一瞬だった。

 

 3曲目は「ray」。イントロからのチャマのベースで、周りの人たちのボルテージは最高潮に達していた。特にチャマのベースの部分では、「キャー!」という悲鳴に近い、感極まったような肉声さえ聞こえてきた。藤くんは出島の前に出てきて、囲まれるようにして揚々と歌い上げる。「♪お別れしたのは何で 何のためだったんだろうな」の部分で藤くんは、お客さんの手振りに合わせて、胸の前で小さく両手を動かしていたり、「♪時々熱が出るよ」の部分では、歌詞に合わせて、額に右手を持ってくる動きを見せていたり、そんな藤原に、僕は38歳とは思えないくらいの可愛さと、愛おしさを感じた。奇しくも男なのに、キュンとしていた自分がそこにいた気がしました。

 

 3曲の演奏が終了すると、ここでチャマのMCが始まる。「こんばんはー!BUMP OF CHICKENでーす!」なぜかチャマのMCを聴くと安心する。「今日、初めて僕たちのライブに来たよって人―?」「もし周りで具合悪そうな人見つけたら声かけてあげて下さい」など、チャマが投げかける言葉一つひとつが温かくて愛おしい。するとチャマがいきなり、「石川産業展示館!石川産業展示館!石川産業展示館!」のコールを始める。チャマのコールに戸惑いを感じながらも、お客さんもコールに応えるように「石川産業展示館!」とコールを始める。何回かコールを繰り返したのち、チャマが「そういうこと!4号館!」と、格好良いのか悪いのか分からない謎の締め方でコールを終わらせていました。石川産業展示館コールも終わり、ライブは4曲目へ。

 

 4曲目は「トーチ」。今ツアー3回目のトーチです。でも、聴いた回数とか関係なく、ライブで聴くときは、その時の心境や感情に凄く左右されるから、何回聴いても初めて聴いたような新鮮味を味わうことができる。一回一回のライブ、セトリが似ていても、やはり感じるものや心動かされるものは、一つひとつが違っていて、それがまた面白くもある。そして純粋に楽しい。もっと欲を言うと、トーチ枠の宇宙飛行士への手紙もどこかのツアーで聴いてみたい。

 

 5曲目は「Ever lasting lie」。個人的に、今までのバンプのライブでは聴いたことがなく、またPFツアーでも初めて聴く曲である。初めて生で聴けるということもあり、歌詞と4人が丁寧に紡ぐ音にただただ聴き入っていた。特に間奏の藤原のギターソロは余すところなく格好良さが滲み出ていた。正直この曲は普段聴くことが少ないので、ライブで生で聴いて、もう一度きちんと歌詞を見て聴いてみようと思った。

 

 6曲目は「記念撮影」。これまでの公演(幕張、静岡公演)では背景にMVが流れていたが、石川公演では流れていなかった。しかし、だからといって不満に思ったわけではなく、それはそれで、出島の先端でお客さんに囲まれながら、必死に力強く丁寧に歌い上げる藤原の姿に集中することが出来たので、良かったと思う。「♪迷子のままでも大丈夫 僕らはどこへでも行けると思う」藤くんらしい歌詞に、勇気をもらえたし、背中を押してもらえた気がした。

 

 ここで再びチャマのMCタイムである。このタームではチャマがメンバーの自己紹介をする。チャマ→藤くん→ヒロ→秀ちゃんの順で自己紹介がされる。チャマは藤くんとヒロの自己紹介をし、何を思ったのかチャマは少し無茶ぶり気味にヒロに、秀ちゃんの自己紹介をするように命じられ、まじかと言わんばかりの表情を浮かべながら、ヒロらしさ全開で、噛みそうになりながらも、精一杯秀ちゃんの自己紹介をしていたのが印象的だった。メンバーの自己紹介が終わると、再び石川産業展示館コールが幕を開ける。今度は少し難易度を上げ、チャマが「石川産業展示館~?」と言ったら、お客さんは「4号館―!」と叫び、「石川産業~?」と言ったら、お客さんは「展示館―!」と叫び、「石川産業展示~?」と言ったら、お客さんは「館―!」と叫ぶ。途中で、何だこれはと正気に戻って思いましたが、とても楽しかったので良しとしましょう。このコールを何回か繰り返したあと、ラストにチャマは「石川産業~?」とお客さんに投げかけましたが、お客さんの返答がバラバラで、「展示館―!」と叫んでいる人もいれば、「4号館―!」と叫んでいる人もいて、そんな状況に対してチャマは「そこは展示館でしょっ!!」と、お笑い芸人がツッコミを入れるような瞬発さとタイミングで、ふいに笑みがこぼれてしまいました。そんなツッコミが入るや否や、すぐに7曲目の演奏がスタートします。

 

 7曲目は「pinkie」。pinkieカップリング曲にも関わらず、今ツアーの固定セトリに含まれている楽曲で、ライブで聴くと更に好きになります。少しは見慣れた、ハンドマイク藤原も登場し、ついつい見惚れてしまいます。背景には、桜のようなピンクの花びらが舞い散っており、少し早い春の訪れさえ感じさせられました。個人的に、pinkieが収録されているA面のシングル「HAPPY」もいつか聴いてみたいですね。HAPPYを聴くことが出来たら、もうそこにお墓を埋めたいと思っております。

 

 8曲目は「花の名」。イントロが聞こえた瞬間、感情が覚束なくなり、どこからか懐かしい記憶や、哀しい記憶が刹那的に蘇ってきたような気がしました。PFツアーでは初めて聴く楽曲です。お客さんは、ほとんどの人が棒立ちで聴き入っていたのですが、1番が終わり、2番に入ると藤くんが、「自分の光ってるPIXMOB見せてよ」と、囁くようなジェスチャーで、右手を上げる素振りを見せました。傍から見れば、些細な動作だったかも知れないけれど、僕にとって、藤くんが右手を上げる動作は、グッと心に響いてくるものがあった。藤くんは、ちゃんと私たち一人ひとりに向けて、歌ってくれている。私たちの光をちゃんと、一つひとつ心から正面で受け止めてくれている。そんなことを、聴き入りながら思った。また、歌詞変えも多く、覚えている箇所で言うと、2Aメロ「♪僕が今日置く唄は あなたと出会えた証拠で」。Bメロ「♪歌う力を借りたから 声の出るうちに 返さなきゃ」。そして2番終わりのCメロ「♪瞼閉じて 耳澄まして 君に会いに来た音がある ここにも」。大サビからラストにかけても、歌詞を変えて歌っていたけれど、たくさんありすぎて、僕の頭では少し限界がありました。もしかしたら半分くらい歌詞変えて歌ってたんじゃないか説が自分の中で浮上していましたが、そんなことも忘れるくらい、温かい気持ちにさせてもらいました。僕も光ってる一部になれたこと。少し大袈裟かも知れないけれど、生きていること、生きていけることを肯定された気がしました。

 

 9曲目は「三ツ星カルテット」。出島の先端に4人が出てきて演奏します。演奏する前に、藤くんが、pinkieが始まる前のチャマのMCについて弄ります。それは、お客さんの「展示館―!」と「4号館―!」が合わさって「4時間―!」と聞こえたことでした。藤くんは曰く、「4時間って何だ?」と思いながらpinkieを歌い始めたそうです。僕は、微笑ましすぎて、不覚にもキュンとしてしまいました。一応言っておきますが、彼らは38歳のそこそこのおじさんです。三ツ星カルテットは、ギターのメロディラインが好きすぎて、3分じゃ足りないくらいです。もっと聴いていたい。そう思えるような楽曲です。

 

 10曲目に入る前に再びMCタイムです。ここでは藤くんとヒロが喋ります。話題は主に2つ。1つ目は、前日に行った金沢21世紀美術館の話、2つ目は、10年くらい前にカイワレコンビで石川に温泉旅行に来たことがあるという話です。2つ目の話は意外すぎて、「へぇー!」という心の声が会場内から沸き起こっていました。当時は、何の計画も立てずに、宿も予約せずに、藤くんとヒロだけで石川に温泉旅行にいったそうです。そんな中、日帰りで帰れるハズもなく、電話で旅館を予約したらしいのです。そしたら電話先の受付の人が、20代後半の大人の男二人組が、一緒に温泉旅館に泊まることに対して、「え!?男二人?しかも同じ部屋で!?」と、少し勘違いをされたというエピソードを話していました。そんな貴重なエピソードを聴いては、微笑ましく思い、また、ずっと昔から変わらないんだなぁと、しみじみとした気持ちになりました。

 

 こんな笑いありのエピソードが終わったあとは、10曲目「You were here」が演奏されます。You were hereはイントロのチャマのベースが素敵ですね。ここでもハンドマイク藤原参上です。僕はハンドマイクに多少慣れた目つきで見ていましたが、藤くんはまだ覚束ず、まだ少しハンドマイクに不慣れで緊張した雰囲気を感じました。「♪伝えたかった事 伝わったのかな」大丈夫。ちゃんと伝わったよ。受け取ったよ。僕からは直接伝えられないけれど、精一杯耳澄まして受けとれた。曲が終わると藤くんが「ありがとう」とマイクに向かって呟いた。その5文字が気持ちのすべてを表していた気がした。こちらこそありがとうだよ。

 

 You were hereが終わるとメンバーは再び、ステージに。そして演奏された11曲目は「アンサー」。先ほどとは打って変わって盛り上がるナンバー。かつて、3月のライオンのOP曲でもあった。一人ひとりの腕にあるPIXMOBが、自分という存在を証明するかのように煌びやかに輝いている。誰もが平等に光り輝いていた。たとえどんな人生でも、間違いなんてなくて、一人ひとり、一つひとつのドラマがあって、物語があって、葛藤があって今を生きている。人生というものを天秤にかけて、正しいとか、間違いとかいう概念なんて存在しなくて、ただただ同じ輝きを放っている。それぞれの命に大小なんてない。生きていること、それだけで、もう意味がある。価値がある。そんなことを辺り一面に光り輝くPIXMOBを見て思った。僕も、根拠はないけれど、大丈夫だって、心から思えた瞬間だった。

 

 12曲目は「ラフ・メイカ」。バンプのデビュー曲「ダイヤモンド」のカップリング曲である。ライブでは初めて聴く楽曲だった。2番終わりのヒロのギターソロが格好良く、昔のバンプを彷彿とさせてくれた。あの尖っていた頃のバンプが、演奏中、少し相まみえた気がした。17年も前の曲でありながら、そこには新鮮さがあり勢いがあった。ツアーでまた聴けると良いなあ。

 

 MCが挟まれることなく、演奏された13曲目は「宝石になった日」。ヒロのギターや、メロディのトーンを変えるなど、細やかなライブアレンジが見られ、光り輝くPIXMOBの景色や照明などすべてが綺麗だった。この時、僕は、着実に少しずつライブが終わりに近づいていることを意識し始めた。そんなことを考えた途端、急に寂しくなった。もっと聴いていたい。もっとこの場に居座っていたい。もっとこの景色を記憶に刻んでおきたい。そんな叶うはずもない欲望と戦いながら、待ってくれない時間にただただ流されていた。

 

 14曲目は「Butterfly」。イントロが聞こえた瞬間の周りの人たちの「あ!この曲は!!」といった心の叫び声が漏れて、それが一気に今まで以上のエネルギーに変わり、一目散にガラッと空気が変わった気がした。もしかしたら、今日一番の盛り上がりだったかも知れない。僕は、疲れ切った二の腕を精一杯振り絞りながら、光り輝くPIVMOBを高く掲げ、降りかかってくる寂しさや悲しささえもバネにして、心の底から光を放ち、飛んだり踊ったりした。サビでは、虹色のレーザー光線が四方八方に解き放たれ、演出が最高に綺麗で圧巻の景色だった。歌詞はあまり明るくないのに、ライブではそれを良い意味で塗り替えるような演出で、この曲は、CDだけじゃなく、是非ライブで聴いて、そして演出も沢山の人に見て欲しいと思った。もしかしたら、これがButterflyという楽曲のあるべき姿かも知れない。Butterflyが終わると、藤くんがマイク越しに話す。「チャマ、さっき俺の後ろひっぱった?」とチャマに尋ねる。するとチャマは「バーンッ!!(火薬演出)で、藤くん死んじゃう!って思ったからさ。」と少し笑みを浮かべながら言う。それに対して藤くんは「なんだお前か。良いライブをしていると座敷わらしでも来たのかと思って...金髪だったのか...。」と少し可愛げのあるツッコミを入れ、お客さんも笑いを浮かべていました。

 

 15曲目に差し掛かる前に、藤くんが言葉を放つ。「Butterfly歌った?ウォーウォーウォーって歌ったの?あっそうー。満足したの?してない?じゃあ次の曲、私はここに居るんだよって証明をね、大きな声で歌って下さい。」こんなMCをしたあとに演奏された曲は「fire sign」。イントロでもう色々な感情が湧き出てくる。ヒロはどんな気持ちで演奏しているのだろう。メンバーMCで言わないけれど、きっとあの頃は、辛い時期もあって、それを乗り越えて今があるんだろうなぁとか、言葉に出来ないような繊細な気持ちを、これまで培ってきた信頼関係や一緒に歩んできた仲間として、カバーし合って、挫けそうになりながらも、助け合ってここまで来たんだろうなぁって思ったりする。僕ともう一人の僕、そして僕とメンバー、こんな忙しい感情のなかで聴くfire signは、どこか切なくて、それでいて美しい。曲終わりの、お客さんで合唱する箇所では、ヒロが男女でコーラスを分けようとしていました。しかし、女子から男子にコーラスを切り替えるタイミングが掴めず、戸惑っていて、それがもうヒロらしくて、愛おしくて、つい笑ってしまいました。おそらくこの笑いの類いは、決して馬鹿にするような笑いではなくて、微笑ましくてつい笑みが零れてしまうような笑い。オーロラを見たときのような、街のイルミネーションを見たときのような、無意識的に零れてしまうような感情の類い。また、コーラス後半には、ステージでギターソロを弾いている藤くんを呼び、ヒロが「藤くん、下コーラス歌って」と言ったのですが、藤くんはよく聞こえなかったみたいで、「え!?」みたいな表情を浮かべ、ちゃんと聞こえるように耳元で話していたのが印象的でした。こんな、カイワレコンビの愛おしさと仲の良さをステージ上で見せられると、キュンとせざるを得ません。もう一度言っておきますが、彼らは38歳のおじさんです。ここはすごく重要です。アンダーラインでも引いておいてください。

 

 そして、「あぁ...終わっちゃう...。」と藤くんの寂しい声が響き渡るなか、本編ラストの曲「リボン」が演奏される。僕も寂しくなった。いつもライブが終わってしまうことに対して、寂しさや悲しさを感じていたけれど、彼らも同じ気持ちなんだなぁと、改めて強く思った瞬間でもあった。彼らのライブでは、寂しい気持ちをたまに「あと何曲かで終わってしまいます...。」や「最後の曲聴いて下さい。」など、「寂しい」という言葉をあまり直接口にしない。だから、僕はこれまでのライブでは、もちろん彼らはライブでしか、聴いてくれている人と会うことができないし、ライブも毎年やっている訳でもないから、僕ら以上に寂しい気持ちがあることは、分かっていたつもりだったけれど、それは本当に分かってた「つもり」になっていただけだった。なので、この時ばかりは、本気で寂しいと僕も思えることができた。そうして、一緒に寂しくなれることって、もしかしたら人生の中でも、そんなに数多くないことだと思うから、こういう気持ちを大好きな人たちと一緒に共有することが出来てとても光栄に思えた。一緒に寂しくなると、少しだけ、ほんの少しだけ幸せな気持ちが芽生える気がする。大丈夫だよって、少し背中を押された気がする。解けなかったリボンが、こうして聴き手の気持ちまでも一緒に紡いでくれた気がした。こうして鳴り止まない温かい拍手のなか、演奏が終わり、メンバーは「ありがとう!」と言って、ステージ裏へ颯爽と足を運ぶ。

 

 するとお客さんは、会場名をアンコールでコールするという暗黙のルール的なものに乗っかって、「石川産業展示館!石川産業展示館!」とコールを始める。しかし、中々揃わない。コールを5分くらい続けていると、照明が灯され、メンバーがツアーTに着替えた状態で、ステージに出てくる。チャマが「アンコールありがとうー!」と言う。からの、クリスマス限定グッズの宣伝と、もう一つ、お客さんにちょっとしたダメ出しをする。「なんで君たち、コールが揃わなかったか分かる?それは、石川!産業!展示館!(4拍子)ってで言ってたから。それが色んなところからやってくるから、石川産業...石川産業...石川...石川...............ってDJっぽくなっちゃうから!それはそれで面白いから良いんだけどね。だから石川!産業!展示館!(8拍子)って言うと揃うでしょ。」と、コールが揃わなかった原因と解決策をサラっと解説したあと、スマホを取り出し、インスタに乗せる謎のコール動画を撮る準備を始める。そこでチャマは藤くんとヒロに、コールを崩すように指示。チャマは「コールを邪魔してくるけど、気を取られないでね。」と、笑いながらスマホを片手にお客さんを撮影し始める。いつもインスタで他公演のコール動画を見ていくなかで、何でカイワレコンビは、途中で謎の言葉を発しているのだろう?とずっと疑問に思っていたのですが、ここで始めて理解することが出来ました。まさかのお客さんのコールを崩そうとしていたとは思いませんでした。僕は藤くんとヒロの声が聞きたい欲に勝てずに、途中で耳すまして、藤くんとヒロが何を言ってるのか聞き取ろうとしてました。コールを続けなければならない反面、藤くんとヒロの声に惑わされてはいけない。これは簡単なようで意外と難しい。なぜなら、どうしてもカイワレコンビに耳を傾けてしまうから。僕はこのゲームには負けてもしょうがないとさえ思ってしまいました。というか僕は見事に敗北していたと思います。

 

 撮影が終わったあとは演奏体制に。しかし藤くんがギターを持っておらず、そんな姿を見て、すかさずチャマが「藤くん、ギターを持ってください!」と華麗なツッコミで笑いを誘います。そして藤くんのMCが始まります。「今までツアーで何回かこの曲をやってきたんですけど、今回でこの曲をするのは最後になります。心を込めて歌います。聴いて下さい。Merry Christmas。」そんな心温まるMCをしたあと、アンコール1曲「Merry Christmas」が藤くんのアコギから始まります。サビに入ると背景に、虹色に彩られた大きなツリーと、その上から嫋やかな動きで雪がふんわり降り注ぎます。いつかライブで聴きたいと思っていた曲がこうして生で聴けることに対して、もう言葉が出てきません。演出、演奏、藤くんの歌声、すべてがすべて贅沢な瞬間で、心が浄化されたような気がしました。さらにラストの大サビになると、ツリーの装飾と、周りのイルミネーションの数が増え、盛大な虹色に彩られて、心奪われました。おそらく途中で流れ星も見えたと思います。そんな流れ星も誰かが見たのなら、素敵なことだと思います。ラストの「メーリークリースマース」をお客さんと合唱します。歌詞はこんなにも寂しい曲なのに、寂しさのなかにも、温かさや優しさが見えた気がしました。本当にMerry Christmasを聴くことが出来て良かった。心から。でももう長い間、聴くことができないって思うだけで、悲しくなる。けれど、この記憶を感情を深く心に刻み込んで忘れないようにしておきたいなぁ。曲が終わると藤くんが、もうこの曲をやらないことに対して、とても寂しかったらしく、「もう1度やっていい?」と少し冗談混じりで言っていました。僕は言葉に甘えに甘えて、マジでもう1度やって欲しいと思いましたが、大人の事情的なものに守られて無理そうでした。

 

 そしてアンコール2曲目は「流星群」。ここでもまた藤くんがポロっと心の声を口にします。「寂しいなぁ...。」僕も寂しかった。本当に終わってしまう。この現実を受け止められない。そんなことを考える間もなく、演奏がスタートします。つりそうなっている二の腕を精一杯挙げて、僕はここにいる、という証明を力を振り絞って、光り輝くPIXMOBを掲げます。「こんな魔法のような夜に 君と一緒で良かった」なんか、この先も、どんなことがあっても大丈夫って思えた。ありがとう。

 

 演奏が終わると、チャマは上半身裸になり、身に付けた筋肉とクビレを見せるように、「ありがとう!」と満面の笑みを浮かべ、リストバンドやツイストをお客さんに投げ、ステージ裏へ。秀ちゃんも、バイバイって手を振りながらステージ裏へ。ヒロも噛みそうになりながらも、微笑みながら、リストバンドとツイストバンドを投げ、ステージ裏へ。そして最後に藤くんのMC。「今日は寒い中、本当にありがとうございます。」も10秒くらい長いお辞儀をして、その後も何度も頭を下げる。藤くんが言っていたのは、流星群のイントロが切なすぎて、寂しくなったこと。寒い中本当に来てくれてありがとうってこと。そして、寒いから、お風呂にちゃんとお湯張って温かくして寝なさいってこと。最後には「今日はありがとう。楽しかった。バイバイ。おやすみ。」そういって帰るかと思いきや、サンタコスのニコルをアンプの上に置き、帽子の角度など、凄く繊細に細かく微調整して、「このあと、写真OKタイムになるから、良かったら写真撮ってね。」と、藤くんの優しさが滲み出た行動と言葉に心奪われます。また、「いつもは、ペットボトルの蓋開けてお客さんにあげるんだけど、今日は外寒いだろうから、蓋閉めたまま投げるね。」といい、水が入ったペットボトルをお客さんに投げる。しかし、お客さんからキャー!という悲鳴が聞こえてきたらしく、藤くんはすかさず「ごめんね。そんなのが飛んできたら怖いよね。もはや鈍器だよね。」と笑い混じりの表情を浮かべて、舞台裏に入る寸前まで、最後まで手を振り、僕は楽しさと寂しさを噛み締めながら、精一杯手を振り、ありがとうって心のなかでいっぱい伝えた。こうして石川公演は幕を閉じた。

 

 僕が1番大きく感じたことは、今までの公演より、すごく大きな"寂しさ"を感じたこと。それはおそらく、2017年も残りわずかで、今年がもう終わってしまうことに対する寂しさとライブが終わってしまう寂しさが、合わさって、大きな寂しさになったからだと思っている。僕はいつも年末になると、どこからか寂しさや哀しさを感じてしまう。別に特別悲しいことが起こったわけでもないけれど、1年という月日が終わってしまうことに対して、寂しい感情を抱いてしまう。これは何でなんだろうって、いつも自問自答して、それでも分からないまま、心機一転しようって決めて新年を迎えているような気がする。でもそんな大きな寂しさは、自分のなかで、大きな糧になっていて、また頑張ろうって少しでも思えた自分がいた。だから、一見ネガティブに見える感情も、捉え方を変えれば、自分の人生を振り返って、たとえ僅かでも、小さな一歩でも、行動しよう、頑張ろうって思えたなら、それだけで充分大きな意味があると思う。たとえ大きな意味がなくても、生きていて、ライブをたくさんの人と共有したという事実さえあれば、この先も生きて行ける気がする。頑張ることも大事だけれど、頑張らないことも大事。どんなに寂しくても悲しくても、自分らしく人生を生きていれば、それだけで僕はどこでも行けるって信じてる。心がある限り、生き続けていける。本当にありがとう。

 

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良きMerry Christmasを。

 

 

ではでは★★★★